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 香川の自宅までどうにか倒れずにたどり着いたが、彼の自室に入ったとたん、心はその場にずるずると座り込んだ。 体が重くて力が入らず、動悸のせいでぐるぐると目が回る感じがした。 「Come(来い)」  自分の意志では動きたがらなかった体が、香川の命令にぴくりと反応する。 心は座り込んだままの体勢で、膝をにじってベッドに腰を掛けている香川の目の前まで移動した。 「良い子だ、」  頭を撫ぜられて、鉛のようだった体がふわんと軽く浮いたような心地になる。 麻薬のようなその幸福感をもっと欲しくて、心はねだるように香川を見つめた。  香川は面白そうに口角を上げると、心の頭を撫でていた手を頬に滑らせ、そして親指で唇に触れた。 「ンむ、」  Commandを使用されているわけじゃないのに顔をそらせない。 渇ききった体は、香川が欲しいものを与えてくれることを期待して、心の意志など無関係に服従しようとする。 「あ、」  香川のつま先が股間を軽く蹴り、そのままゆるく押しつぶされた。 「や、だっ、痛い、っ」 「違うだろ、」 「う、や、何でもするっ、何でもするから、お願い、」  香川は蔑むように鼻で笑った。 ふたりとも、自分の生まれ持った二次性に納得していない。 そして納得していないという互いの心理を知っている。 だが、同情しているというのでもない。 どちらかと言えば、それは嫌悪に近かった。
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