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「え、」  よく聞こえなくて、否、聞こえていたのだが、聞き間違いだったのかと思って、優馬は聞き返した。  陽夏瀬はがばりと起き上がると、優馬を睨みつけた。 「Subだったっ、」  泣きそうな声だった。  優馬は驚きのために目を丸くした。 泣いていたのか、陽夏瀬の赤くなった目もとを見ているうちに、ふと、突然、奇妙な衝動が沸き起こった。  ほとんど無意識に体が動いて、優馬は陽夏瀬を抱きしめた。 「ゆ、うま?」  戸惑うような陽夏瀬の声。  優馬はそのとき、陽夏瀬を怖いものから守って、安心させてあげなければ、という義務感にかられていた。 「大丈夫だよ、」 「根拠ないこと、言うな、」  陽夏瀬は抱きしめる優馬の腕を振り払うこともなく、弱々しく言い返してくる。 優馬はうつむく陽夏瀬の顔を覗き込んだ。 「おれだってDomだよ。陽夏瀬が辛いなら、おれが傍にいる、」  すとんと何の抵抗もなく舌を滑り落ちたその言葉に、陽夏瀬はきょとんした。  それから、ぷっと吹き出した。 「なに、それ。愛の告白みたい、」 「うるさいな。なんでもいいんだよ。陽夏瀬が、」 「?」 「陽夏瀬が、そうやってまた笑えるなら、なんでもする、」  陽夏瀬は少し顔を赤くして、また笑った。 「そういうの、おれじゃなくて、付き合ってる子とかに言いなよ、」 「何で」 「だって、何か、変じゃない、」 「別に変じゃない」 「そうかなぁ、」  いまいち納得していないような顔で、陽夏瀬は首をかしげた。
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