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「してみる?」
陽夏瀬が少しでも楽になるのならと思って提案したが、陽夏瀬はあまり気乗りしなさそうな顔をした。
「……優馬、したくないんじゃないの、」
「おれは、別にどっちでも、」
優馬は言いかけて、いちど口をつぐんだ。
「陽夏瀬がいいなら、おれはしたいよ、」
言い直した優馬を、陽夏瀬はじっと見つめた。
それから、
「ウソ、」
と、言った。
「嘘じゃないよ」
否定しても、陽夏瀬はいまいち納得していない様子だった。
「陽夏瀬がして欲しいことがあるなら、なんでもする。おれが、そうしたい、」
その感情が、どこから来るものなのかはよくわからない。
優馬は小学生の頃から孤立しがちだった。
それは無視とかイジメとかが原因ではない。
優馬は決して自分から他人に暴力を振るったことはなかったが、人に懐かない野生の肉食獣のような、強暴な雰囲気を纏っていた。
その性質は自然と人を遠ざけた。
絡んでくるのは、生意気だと言いがかりをつけてくる喧嘩目当ての不良ばかりで、小学三年生の頃から中学生相手にぼこぼこにされていた。
しかし次第に、優馬の喧嘩の腕は上がっていった。
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