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 一定の距離を保つ続けているふたりには、共通の話題はないはずだ。 「最近、芹沢と一緒にいるよな?」  何の話をされているのかわからなくて、優馬は、は? と聞き返した。 「手、出すなよ」  優馬は眉を顰めて、むくりと上体を起こした。  ――誰が、誰に、手を出す? 「何の話だ、」 「芹沢の話だよ」 「出すわけないだろ、」  なぜ牽制などされなければいけないのかと、不本意すぎて、思わず吐き捨てるように答える。  すると香川は意外そうな顔をした。 「なんだ、脈ないのに誘ってんのか、あいつ」 「知るかよ」  香川は何か考えるように少し間を置いてから、ふうん、とうなずいた。 「本当に関係ないんだな、」 「ねえよ、」 「じゃぁ、おれらがあいつに何しても、おまえは干渉する気はないんだな?」  優馬は眉を顰めて香川をにらみつけた。 「関係ないって言ってるだろ、」  苛立ちが籠もった優馬の低い声に、香川は肩をすくめた。 「わかったよ。あいつのほうから一方的に絡んでるってだけなら、躾けておく。悪かったな、」  優馬は再びその場に寝転び、目を閉じた。 香川が立ち上がり、気配が遠ざかってゆく。  欲求のない優馬にとって、SubだのDomだのという性差は何の意味も成さない。 だから心のことも煩わしかったし、そのことで絡んでくる香川も面倒だった。  陽夏瀬が最初で最後だ。 もう二度と、自分をDomなどとは認めない。 そう、固く決意していた。
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