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3.
秋らしく不安定な空模様だった。
朝はよく晴れていた空は午後に向かうにつれてどんよりと曇りだし、ぽつぽつと地面が濡れ始めている。
霞む景色の中、校舎前に植えられているハナミズキの実が、やけに赤い。
雨の日は特に調子の悪い心は、それでもいつものように、昼休みになると購買でいちご牛乳を買ってから建設科の教室へ向かった。
優馬のところへ通い始めた当初は、物珍しそうにジロジロと無遠慮な視線が向けられていたが、最近は慣れてきたのか、心が建設科のクラスへ入っていってもぶしつけな視線は感じない。
優馬も迷惑そうな顔をしつつも、結局、心が持ってくるいちご牛乳を受け取った。
その日は、真面目に授業を受けていた、ということもなさそうだが、めずらしく優馬の机の上に教科書が広げられていた。
彼は心に気づかずにふわりと欠伸をして、机に頭を伏せようとする。
「大橋、」
心は優馬の背中側から声をかけて、首の後にいちご牛乳の冷たい紙パックをぺたりと当てた。
眠りかけていた優馬が飛び起きて、心の方を振り返ってギロリと睨みつけた。
さすがに上級生から同級生、他校正までをひとりで制圧したという噂を持つ男なだけあって、睨まれると迫力がある。
しかしDomの場合、こういうときGlareが漏れることもあるのだが、優馬からは何も感じられない。
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