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繰り返すが機械科と建設科は犬猿の仲で、特に香川と、建設科の富樫は、一触触発で、それは二年生の生徒の誰もが知る事実だ。
何事かが起こると察知した生徒たちは、昼食を投げ出して教室から逃げ出してゆく。
優馬だけが呑気に寝ていた。
「香川さ、いくらおれのこと好きでも、ここまで追ってくるのはマズいんじゃ、」
「うるせーな。だいたい、お前のほから寄ってきたんだろ。なんで今さら逃げンの?」
「いやー、なんつーか……ちょっと相性が合わなかったっていうか?」
「ふざけてんじゃねぇよ、」
香川はガンッと近くにあった机を蹴飛ばした。
その音で、ようやく異変に気づいたらしい優馬は、のんびりと顔を上げる。
しかし、色々ともう遅かった。
「ふざけてんのはお前だろ、」
香川の後ろから、ドスのきいた低い声とともに、ぬっと人影が現れた。
その人影は空席になっているイスをつかんで振り上げると、躊躇なく香川に向かってぶん投げた。
金属の壊れてはじける音がけたたましく響く。
心は思わず耳を塞いだ。
「富樫……、ずいぶんな挨拶だな、」
投げつけられたイスを避けた香川は、平然とした態度で、富樫を睨みつけた。
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