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心は目を見張った。
香川がSwitchであることは知っていたが、Subに切り替わったところは今まで見たことがない。
峰岸の存在はあくまで保険で、香川は普段、相手にCommandを使わせるような隙など作らなかった。
「Down」
富樫はここぞとばかりに、続けて命令する。
香川はそのCommandにすぐには従わなかったが、それでももう、富樫に向かって殴りかかることはできなくなっているようだった。
優勢になった富樫は、にやりと口もとを歪めて立ち上がった。
その眼前で、耐えきれなくなったように、香川が膝をつく。
しかし香川の頭が地に伏せる前に、いつの間にか席を立っていた優馬がふたりの間に割って入り、香川の腕を引き上げた。
そして、
「Switch」
優馬のくっきりとした言葉が富樫のCommandを上書きした。
香川は再びDomに切り替わる。
短時間に急な切り替えが行われたせいか、彼はふらりとよろめいた。
「おい、」
と、優馬がその肩を支えようとすると、香川はその腕を思い切り振り払った。
「離せよっ、」
優馬は肩をすくめて香川から手を離した。
「くそ、」
香川は舌打ちとともにつぶやき、苛々とした様子で眉根に深く皺を寄せている。
「大橋、おまえっ、」
富樫が気に食わなさそうに優馬を睨んだ。
Glareが溢れ出している。
それは、DomからDomに対する挑発だった。
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