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 停学中は基本外出禁止とされているが、学校に届出もせずにアルバイトをしている優馬は、どうせやることもないしと思って、日中のシフトを増やしてもらうことにした。  優馬には両親についての記憶がほとんどなく、年の離れた姉がずっと親代わりだった。  学費がもったいないから、高校は行かないつもりだったのに、今どきせめて高校くらいは出ていないとろくな仕事がないと、夜の仕事をしてまで通わせてくれている。  だから正直、停学を受けたことについては姉に合わす顔がなかった。 「あんたを高校に行かせてるのは私が勝手にやってることで、あんたが気にすることじゃないのよ。将来おとなになって、あのとき姉ちゃんの言うこと聞いててよかったなってちょっとでも思う瞬間があったら、おいしいご飯でもおごってくれればいいよ、」  姉はあっけらかんとそう言った。 結果的に優馬がどういう道に進むことになったとしても、それを申し訳なく思う必要はないのだと言う。  停学のことも、優馬が良いと思ってやったことならそれで良かったんだろう、と言って笑っていた。
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