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玄関先で、空から降り落ちてくる細かい雪の粒を見ながら、陽夏瀬が戻るのを待った。
雪は積もることなく、地面に触れた瞬間に溶けて消えてゆく。
曇り空は少しずつ暗くなった。
優馬はさすがに遅いな、と思って、陽夏瀬を探しに行った。
どこで話しているのかはわからなかった。
陽夏瀬の携帯にコールをしたが出ないので、とにかく校内を歩き回って探した。
そしてふと、中庭へ続く人けのない廊下のほうから、Glareが漏れているのを感じて、優馬は慌てて駆け出した。
果たしてふたりはそこで向かい合っていた。
「陽夏瀬、」
優馬がそう声をかけるのとほとんど同時に、陽夏瀬はその場にへたり込んでしまった。
表情は虚ろになって、何もない空間を見つめている。
Sub Dropという症状を、優馬は保健体育の授業で聞いたことがあった。
「陽夏瀬!」
今度は声を張り上げて呼んだが、陽夏瀬の反応はない。
対峙する男子生徒も半ば混乱していて、Glareを制御できないようだった。
彼が陽夏瀬にGlareを浴びせたのは、わざとではなく、事故だったのかもしれない。
しかしその瞬間、陽夏瀬を傷つけられたという目前の事実に優馬はカッと頭に血が昇って、何も冷静に考えることが出来なかった。
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