5.

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 まだ何人か立っている生徒もいたが、その表情は、もうすっかり戦意を喪失していた。  別に喧嘩がしたいわけじゃなかった優馬は、残っている相手をぎろりと睨みつける。 「続けるか?」  脅嚇の意図を込めて低く放った声に、逃げるかどうかを逡巡していた様子だった彼らは、完全に諦めて臨戦態勢を解いた。 倒れている仲間を回収して、屋上から出ていく。  彼らの姿が見えなくなって、優馬はふと、昼食に買ってきたパンが手から消えていることに気づいた。 喧嘩の最中にどこかへ落としてしまったようだ。 空腹だったことを思い出し、はぁ、とため息をつく。  それからゆっくりと、地面にうつ伏せで転がっている心のほうへ足を向けた。
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