5.

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 くるりと心に背中を向けて、出口のほうへ歩き出す。  どこかで鳶が鳴いた。  優馬は立ち止まって秋空を仰いだ。 すっきりと晴れた青空に、薄い雲が浮いている。 鳶の姿は見つからない。  ふ、と、背後にあった心の気配が突然消えたような気がして、とっさにうしろを振り返った。  心は柵にもたれて足を伸ばして座ったまま、ぼんやりと上空へ顔を向けていた。 彼の瞳はただ、流れてゆく雲を映している。  おわり
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