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「昨日のお礼」
優馬の席の前のイスに後ろ向きに座って、にこにこと笑いながら、金髪の男がそう言ってなぜか購買のいちご牛乳を優馬の目の前に差し出した。
「だれ、おまえ、」
優馬は苛々と目の前の男を睨みつけた。
だいたい、お礼をされるような覚えもない。
「デザイン科の芹沢心」
「知らない」
「えー、昨日邪魔してくれたじゃん、」
「あんなとこでヤってんのが悪い、」
「覚えてんじゃん」
しまった、と思ったがいちど口から出てしまった言葉は返らない。
優馬はチッと舌打ちした。
「大橋って、Domだよね、」
「ちがう」
「えー、うそだ」
心は信じられないという顔をした。
「おれ昨日、大橋のGlareに軽くあてられたんだけど?」
「んなわけあるか、」
言い返したところで、そういえばと思って優馬は眉根を寄せた。
「つか、おまえなんで名前、……」
「え? 知ってるよ? 二年で大橋のこと知らないやつ居ないでしょ、」
心は呑気そうに言った。
「つか、今更そこ?」
あはは、と笑っている心を見ていると、優馬はますますイライラしてきて、目の前のいちご牛乳を乱暴につかむと、ストローをさして中身をすすった。
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