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それから優馬はベッドを離れ、テーブルに置かれていた薬箱を持って部屋を出て行ってしまう。
頭では拒絶しているはずなのに、遺伝子に組み込まれた本能が、Domの手を求めて胸が疼いた。
すぐに戻ってくるのかと思っていたら、優馬は二十分ほど経ってからやっと戻ってきた。
シャワーを浴びてきたようで、普段はオールバックにセットされている前髪が下りていた。
しかしもう心には触れようとせず、ベッド脇に腰を下ろすと、コンビニのビニール袋からペットボトル飲料と惣菜パンを取り出す。
「ああ、そうだ。お前、いい加減下穿けよ、」
と、優馬は心の顔の前にプラスチックのパッケージに入った下着を投げ置いた。
心は黙ったまま、しばらくそれをじっと見つめていたが、なぜか突然、じわりと視界が滲んだ。
やばい、と思って慌てて目もとを掌で乱暴に拭うと、ぴりっとした痛みが走った。
顔も怪我をしていることを忘れていた。
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