信頼したくないSubと支配したくないDomと

Short Story1. 打算

　どこからどうやって噂が流れるのか、心と香川のパートナー関係が解消したことは校内に知れ渡っていた。

　男子校状態の南工業高校で、面立ちがきれいなうえにかなり顕著にSubの特性が発現する心は、入学したときから、優馬とは違う意味で上級生にも同級生にもよく絡まれていた。

　相手のDomの性質が薄ければ蹴り飛ばして逃げることもできるのだが、GlareやCommandを使われれば為す術がない。
抵抗すると面白がられるのでこちらも欲求発散だと割り切っておとなしくするが、Domの満足を得るための一方的なPlayでは欲求衝動は落ち着くどころかひどくなった。

　だから、香川とのパートナー関係は抑止材料にはなっていたのだ。
そもそも、心はそういう打算もあって香川に近づいた。
欲求不満も解消できて、Defenseで守ってもらえれば一石二鳥だと安易に考えた。

　そして優馬に近づいたのも打算だった。
しかし、優馬は喧嘩も強いしDomとしてのランクも高いのに、完全にGlareをコントロールできる冷静さがあるせいでなかなか心の思うように動かない。