Short Story1. 打算

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「あれ? 効かないじゃん、」  知らない生徒だった。 富樫の隣にいるので、どうやら取り巻きのひとりだ。 にやにやと笑いながらこちらを見てくる。 心が睨み返すと、面白そうに口角をあげた。 「Strip(ストリップ)(脱げ)」  別の男子生徒によってまたCommandが発令される。 心は優馬の腕をつかもうとしたが、体に力が入らない。 とうとうその場に座り込んでしまうと、もう理性は欲求に抗えなかった。  ブレザーを脱ぎ、ワイシャツのボタンを外し始めた心を見て、それを命令した生徒が可笑しそうに声をたてて笑った。 頭の中では嫌だと叫んでいるのに、体がDomに従いたがってかってに動く。  心が半分ほどボタンを外したところで、不意に優馬がむくりと顔を上げた。 本気で熟睡していたらしく、寝ぼけた顔をしてしばらくぼうっと黒板のほうを見ている。 「大橋、」  心はぐっと両手を握りしめてボタンを外す手をどうにか止めた。 体が震えて息が上がる。 爪先が掌に食い込むほど強く力を入れて衝動を耐えていると、やっと状況を察した様子で、優馬は心のほうへ視線を下ろし、口を開いた。 「おまえ……、なんでひとりでこんなところ来るんだよ、」
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