263人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ? 効かないじゃん、」
知らない生徒だった。
富樫の隣にいるので、どうやら取り巻きのひとりだ。
にやにやと笑いながらこちらを見てくる。
心が睨み返すと、面白そうに口角をあげた。
「Strip(脱げ)」
別の男子生徒によってまたCommandが発令される。
心は優馬の腕をつかもうとしたが、体に力が入らない。
とうとうその場に座り込んでしまうと、もう理性は欲求に抗えなかった。
ブレザーを脱ぎ、ワイシャツのボタンを外し始めた心を見て、それを命令した生徒が可笑しそうに声をたてて笑った。
頭の中では嫌だと叫んでいるのに、体がDomに従いたがってかってに動く。
心が半分ほどボタンを外したところで、不意に優馬がむくりと顔を上げた。
本気で熟睡していたらしく、寝ぼけた顔をしてしばらくぼうっと黒板のほうを見ている。
「大橋、」
心はぐっと両手を握りしめてボタンを外す手をどうにか止めた。
体が震えて息が上がる。
爪先が掌に食い込むほど強く力を入れて衝動を耐えていると、やっと状況を察した様子で、優馬は心のほうへ視線を下ろし、口を開いた。
「おまえ……、なんでひとりでこんなところ来るんだよ、」
最初のコメントを投稿しよう!