Short Story1. 打算

6/7
259人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
 心の精神状態が落ち着いたのを見計らったように、優馬の手が心から離れた。 「落ち着いたら自分の教室戻れ。あと、もう建設科にも機械科にも近づくな、」  突き放すような言い方に、体が冷えていく感じがした。 「会いに行くなってこと、」 「そんなこと言ってないだろ、」 「行かないと会えない……、」 「連絡すればいいだろ」 優馬はそう言うと、ポケットからスマートフォンを手にとると、メッセージアプリの画面を表示させてから心のほうへ放り投げた。 「……連絡したってどうせ寝てて気づかないんでしょ」  心はいまいち釈然としないまま、自分もスマホを出すととりあえず優馬の連絡先を登録した。 「なんでだよ、気づくだろ……、そもそも、昼休みに来られたって、学校では何もしないからな」  そんなこと、言われなくても分かっていた。 だいたい優馬の部屋でふたりきりで居ても、かなり頑張って誘わないとなかなかしてくれない。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!