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異世界からの召喚
いつものように過ごしていた日常。
それが、こんなにも…
アッサリと崩れてしまうなんて考えても居なかった。
そう、私は今。
まさにそれを痛感している最中だった。
私は今、なぜか。
大きなお城の客間に居るのだけれど。
これまでの出来事をグルグルとした頭の中で。
どうにか整理し始めてる真っ最中だった。
もう、いろいろ、あるけれど…
でも、そうだ、まずは『冷静』に。
ゆっくり辿るようにと、思い出し始める…
**************************
最初は…
夢だったな、うん。
何度も、夢で声が聞こえてた感じで…
そんな声が徐々に大きくなった事でと。
次第に眠れない夜が続いていた。
だから寝不足なのもあって大学から帰宅してから。
すぐ私は自分の部屋にあるベッドにダイブしたんだけど。
自室のベッドでボンヤリとしていた。
そんな時。
いきなり天井からだった。
螺旋のように真っ白な光が現れた。
呑み込まれるような感覚になって瞳を閉じた。
その白い光と一緒に、また何か声も、そう。
聞こえたけれどハッキリとは判らなかった。
何が起こったのか判らないまま…
眩しい光から閉じてた目を開けた時。
私は自室ではない。
全く知らない、大きな円形型の広場に居た。
寝不足のせいで錯覚を起こしてるのかと。
自分の頬を軽く一度叩いてたけど。
痛みが僅かにあるのも感じた。
私はパニックにならないようにと。
自分で自分の事を、頭の中で復唱した。
これは、確認作業を先に…
まずは自分自身の記憶を確かめた。
私の名前は神楽美雪。
今年から初めての大学生活、それにも慣れ始めた。
それから帰宅して部屋に入った。
それから…
それから…
なぜか?
私は『ここ』に居るような感じ?
どうにか私は僅かに声も出す。
「ここは…
どこ…?」
**************************
召喚の儀式が行われた大きな広場でもある。
若干、薄暗い状態だった。
驚きながら私は周りを見渡す。
でも、あちこちに白い光?
フワフワ浮いている?
私は部屋の中を。
更に見渡して気付いた。
数十人ぐらいか…
かなり人が居る事に気付き、どうにか考える。
それに全員が…
同じような白いローブにフードを被ってるのもある。
もう、これだと…
オカルト宗教の信者達?
そんな中に紛れ込んだような気分になった。
私は一気に警戒心が上がった。
でも、その中の一人がだった。
スタスタと私の方に向かって来るのが判った。
更に警戒をして、もう露わに後ろへと少しずつ下がった。
その人は被っていたフードを取って私と対面する形になったけれど…
私は完全に、その人の顔を見て更に驚いた。
なぜなら、それは…
私と、もう本当に良く似ているからだった。
同じぐらいで、しかも『女の子』なのだから…
違う事があるなら、それは髪と瞳の色だけ。
そのソックリな彼女は…
赤い髪に、赤茶色の瞳をしてた。
でも鏡で見た私と、もう本当に良く似てた。
けれど私とは明らかに違う雰囲気を持ってるのも判る。
そして急に…
「其方が…
『封印師』か?」
「え?
あの、え?」
私は良く判らないまま、変な返答をしてしまう中。
目の前に居る、自分に似た少女がだった。
私の顔を見て少し動揺した感じだったけれど。
ハッキリとした声で改めて言葉を放った。
「其方が選ばれし『封印師』かと問うている、名を答えよ。」
カチーン。
すぐ私は怒りが湧いてくる。
何で、こんな訳の判らない…
こんな状況で!?
更に同じ年みたいな?
自分とソックリな女の子に…
偉そうに命令されなきゃならないのよ!!
私は完全に怒りが出で怒鳴った。
「貴方ねぇ!!
その偉そうな態度で何様なの!?
少なくても人に名前を尋ねる時ぐらい!!
まずは自分から名乗りなさいよ!!」
そう言ってから私は、その自分とソックリさんへ。
思いっきり指をビシッと指して言い切った。
それで辺りまでも全てが静まった。
けど、すぐ、まただった。
ざわざわと何か微妙な雰囲気になった。
これは…
もしかして、ヤバい系かも?
指までは確かに?
やり過ぎちゃったけど…!?
私が内心ハラハラし始める。
ヤバイ宗教団体だったら危険かもしれない!?
それから目の前にいた少女が少しだけ笑った様子にも思った。
でも、また、すぐだった。
さっきと同じ厳しい顔になって私に一礼した。
「これは大変失礼した。
私は『ディガート帝国』の第一皇女。
レーシェル・ローゼント・ディガート。
改めて其方の名を教えて頂けないだろうか。」
目を逸らさず、私へと改めて『レーシェル』と名乗る少女は言ってきた。
私も、どうにか言う。
「神楽、美雪です。」
「カグラ・ミユキ?」
「えっと。
姓が神楽で、名が美雪…
だから美雪で良いよ。
えっと、レーシェル、さん?」
またレーシェルさんは少し笑って言った。
「私の事は、レーシェルで構わない。
私も『ミユキ』と呼んでも良いだろうか?」
「な、何を、レーシェルさ」
「黙っておれ、バルド。」
言葉で少し後ろに居た中年の男が口を挟む様子で…
すぐレーシェルさんの言葉に遮られた。
そんなやり取りを目の当たりにした私は少し考える。
もしかして、レーシェルさんは?
とても偉い人?
なのかな?
と疑問は浮かんだ。
自分と同じ、ソックリな容姿にも関わらず…
何やら雰囲気が全然、違うだけで本当に別人だなと。
私は改めて、マジマジと見てしまう。
まぁ…
そんな赤い髪も?
実際、見た事もないけれど…
「さて、ミユキ。
いきなりの事ゆえ、其方にとっても…
私にとっても大事な話などもある。
もう少し時間を置いてからが良いだろう?
改めてさせて頂きたいと思うのだが…
一度、場所を変えて休まれてはどうだろうか?」
レーシェルさんが少し笑いながらだった。
私に『提案』するよう話しかけてくる。
年齢には相応しい笑みとは言えないのだけれど。
第一印象とは、また違う感じがした。
信頼が出来る相手か、どうにも判らない。
そんな事を言ったら私にとっては…
でも確かに今は何も判らない状態かもしれない…
だから、一応その提案は受け取った。
「うん、その…
いろいろ?
聞きたい事も?
あるんだけど?
今は何が、どうだかすら判らないから…
レーシェルさんの言う通りに。
ちょっと休みたい…
かな?」
私は少し微妙な状態ではあるけれど。
そんなレーシェルさんの提案は何となく?
私へも配慮しての事にも感じる。
だから、そのまま受け入れる事にもした。
「では、ミユキを客間へと案内させよう。
しばらく休んでいて欲しい。」
レーシェルさんは少し笑う。
そうすると、さっき言葉を遮られた人達の方へ行ってからだった。
何やら指示を出してから去った。
そして今、私は客間に案内されて…
こうして頭の中を、どうにか整理してた。
**************************
一方、その頃…
別の広い会議室のような部屋でだった。
何人も居る術師と隣国の重臣を含む中年から年配の男性の中。
レーシェルは安堵していた。
会議の議題内容は、勿論、『封印師』の事についてなのだが…
ざわざわと混乱するよう、あちこち…
既に、それぞれの発言が飛び交っていた。
「やはり『禁術』に、手を出すべきではなかったのではないのか?」
「そもそも、あんな少女の、どこが『封印師』なのだ…」
「とても『魔力』が、あるようにも見えぬぞ。」
「いや、もしかしたら『失敗した』だけなのでは?」
「過去に『こんな事例』がないのだから仕方がないではないか!?」
「禁術を行った『代償』が、これから来るのでは…」
「そんな事を今更言ったところで、どうしようもないだろう!!」
「静まりなさい。」
そんな騒めきすら簡単に止めたのは、レーシェルの一言だった。
それは大きな声で発した言葉でもない。
ただ、ハッキリと不思議と通る高さの声で『一言』を述べただけでもある。
レーシェルは会議中とも思えぬ程。
とても落ち着いていた。
出された紅茶に飲みながら、その飲み終わった紅茶のカップを。
静かに音すら立てず、テーブルへと戻す。
「皆の様々な疑問も不安もだが。
今、騒いでも、何も変わらぬであろう?
勿論、私は『召喚の儀』に、おいてのみ…
ディガート帝国の代表として、また術師としても参加させて頂いた。
その上で私は今回した『召喚の儀』においてです。
だが、一番の不安は消えたと思っている。」
隣国の重臣が、その言葉に対して動揺を隠せずに尋ねた。
「なぜですか、レーシェル様。
何か『確証』でも…
あるのですか?」
「いや?
『確証』と言うような事はないが。」
それに対して、レーシェルは不敵な笑みで返す。
そして相手の返答を待たず、己の考えを述べた。
「私はな。
この『召喚の儀』に関してだが。
一番の『不安要素』が消えたと思っているのだ。
なぜ、この召喚の儀が『禁術』とされているのか…
私は最初、『禁術』とされる召喚の儀は『術者の命を代償』にするか。
または『封印師』ではない『未知の魔族』を。
召喚してしまう可能性の方を疑っていた。」
そこで空になったカップを指先で傾ける。
側近の者が、すぐ気付き片付けると共に、また新たに紅茶が注がれた。
「それを踏まえた上で術師以外の親衛隊を。
準備させ、備えも含め、控えさせても居た。
だが、実際には、どうだ?
術者に何かしらの『影響』があるか?
あの『召喚された少女』に『魔力』を感じたか?
更に、また『悪意』を向けられたか?」
「そ…
それは…」
落ち着かない大小様々な『各国』でもある。
そんな重臣や年配者達すら皆が動揺しても居た。
レーシェルは新たに注がれた紅茶に飲む。
そして満足そうとも取れる様子で紅茶をテーブルに置く。
そこで考えてた事を述べる。
優雅な仕草で立ち上がり、彼らの方へと一礼をする。
それと同時に視線も向けて言い切るよう言葉を放った。
「この度における『封印師の召喚の儀の全て』を。
『カグラ・ミユキに関しての全て』を。
我が『ディガート帝国』にとです。
私に『全て』を。
一任して頂けないでしょうか。
皆様方…」
そして周りから『反対の声』がない事を。
『確認』してから若干、笑って言葉を続けた。
「ありがとうございます。
是非、成果をお待ちしてください。」
そう言ってから年齢には相応しくない笑みも出した。
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