特別個人授業

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先生の家はうちの最寄り駅から二駅離れたところだった。 先生の家、オレの志望校と同じ方角だ。 志望校はさらに二つ先。 「君の志望校はさらに二つ先だね」 先生もオレと同じこと考えてたみたいで嬉しい。 「春から君もこの電車に乗るんだね」 なんて気軽にいうけど。 「受かったら、ですよ」 なんか入試を思い出して、不安になってきた。 「大丈夫だよ、君なら受かるよ。それに今日で悩み事が解決したら、もう合格確実だから」 そう言ってガッツポーズしてくれるけど、そうだった、今日は悩みを相談(?)しにきたんだった。 でもあんなこと言えないよ。 なんて思っていたら先生のお家に着いてしまった。 駅から10分の学生向けのマンションだ。 綺麗なマンション。 「こっちだよ」 そう言って促された部屋は小綺麗で、先生らしくシンプルな家具でまとめられている。 典型的なワンルームマンション。 「適当に座ってて」 そう言われてオレはベッドの横のローテーブルのところに座った。 クッション置いてあるし、ここ座っていい場所だよね? そう思いながらもベッドを背に座るとどきどきする。 このベッドでもしたのかな・・・? なんて思っていると、先生がコーヒーを入れてくれた。 「はい、君にはミルクと砂糖たっぷりのコーヒー薄目のやつね」 「・・・ありがとうございます」 コーヒー飲めないからどうしようかと思ったら、先生ちゃんと分かってた。それはそれでちょっと恥ずかしい。 その入れてくれたコーヒーを一口飲むと、甘くて美味しい。 寒くて冷えた身体は温かいコーヒーにほっとする。 しかも猫舌のオレにはありがたいちょうどいい温度。 ほわぁんとするオレをなんだか嬉しそうに見ると、先生はオレの隣に座った。 「お気に召したようで良かった」 そう言って先生もコーヒーを一口飲む。先生のはもちろんブラックだ。 「さて、君は一体何に悩んでいるのかな?」 え、もうそれ訊いちゃう? オレがなかなか言えずにコーヒーをちびちび飲んでいると、先生はオレの手からカップを取ってテーブルに置いた。 「せっかくここまで来たんだから、ほら、観念して言ってごらん」 至近距離でじっと目を合わせながら言われると、黙っていることも出来ず、オレは昨日の友人との会話を先生に話した。 最初は呆れられたり、バカにされたりするかと思ったけど、先生は真剣に聞いてくれた。 「・・・すみません。くだらない悩みで・・・」 こんな、家にまで呼んでもらってするような相談じゃないことに恐縮していると、先生はオレの頭を撫でてくれた。 「くだらなくないよ。君くらいの年頃は気になって当然だよ」 そういってもらって、オレはちょっとほっとした。先生に嫌われたらどうしようって思ってたから。 「いいよ。知りたいなら教えてあげるから。何が知りたい?」 すごく優しく微笑んで言ってくれるけど、内容が内容だけに訊いていいのか・・・。 オレがもじもじしていると、先生の方から言ってくれた。 「キスのこと、知りたい?」 うっ・・・。 知りたい。 「あの・・・キスってなんでするのかいまいち分からなくて・・・。好きだからって、唇を合わせる必要ないですよね」 唇じゃなくても良くない? だけど、先生はそんなオレにふふ、と笑った。 「そうだね、唇を合わせるだけだったら別にそこじゃなくてもいいよね」 そういうといきなりオレの顎に指をかけると上を向かせて・・・。 ちゅっ。 !!! なに?! 今何したの? 先生!! オレが不意をついたキスに半ばパニックになっていると、先生はくすくす笑った。 「あれ?初キスだった?」 先生っ。 オレさっき言った! キスしたことないって!! さっき昨日の顛末を話した時にちゃんと言ったよっ!
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