特別個人授業

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「なあ、お前さぁ、キスしたことある?」 「え?!」 それは突然投げかけられた、友達からの質問。 受験を控えた1月の半ば、学校帰りにいきなりされたその質問に、オレは言葉を詰まらせた。 なんで今その質問? 全然そんな話じゃなかったじゃん。 「な、なんで?」 「あるの?」 「な、ないよ。お前は?」 「ない」 なんの会話だよ。なんでこいつはこんなこと訊くんだ? 「昨日さ、午前授業だったじゃん。で、家に帰ったらねーちゃんいてさ、彼氏とちゅうしてた」 え?! 「リビングでぐちゅぐちゅいってしててさ、その後出てきたからオレ思わず洗面所に隠れたんだけど、ねーちゃんたちそのまま部屋に入っていってさ」 それって・・・仲良くお話するためじゃないよね・・・。 「オレ、どうしようか迷ったけどどっか行くのもめんどいし、でもねーちゃんオレが帰ってきたの気づいてないし、で、そぉーっと自分の部屋に入ったんだ」 そこは、大人しくどこかに行った方が良かったのでは? 「そしたらさ、隣の部屋から聞こえてきたんだよ。ねーちゃんたちの・・・してる声」 やっぱり? 「声がさ・・・いつものねーちゃんと違うわけ。ほんと、エロ動画聞いてるみたいでさ。ねーちゃんも誰もいないと思って声でかいし・・・」 それはきつい・・・。 「そしたらオレもおかしくなってきちゃって・・・」 え?! もしかして・・・。 オレはびっくりして思わず隣を見た。 「しょうがないだろっ。隣からあんな声聞かされて、ベッドがギシギシする音もしてさっ。するなって言う方が無理だって」 確かに興味津々の年頃だけど。 「お前したことある?」 それ訊く? 「・・・まだない」 してみようと思ったことはあるけど、なんか触るの抵抗ある。 「すごかった。超気持ちよかった。ほんとに出るんだよ、白いの。びゅって」 いや、ちょっと待って。そんなの聞きたくないんだけどっ。 「オレさ、手止まらなくて3回も出しちゃった」 だからっ。 「でも隣終わんなくて、ベッドの中で布団被ってたらいつの間にか寝ててさ、起きたらねーちゃん達いなかったわ」 オレ何聞かされてるんだ? 「でもさ、その後がやばくて・・・。ねーちゃん見る度に、このねーちゃんがあんな声出して、あんなことしてるんだと思ったら、あそこ勃っちゃってさ。昨日の夜も、今日の朝もしこしこしちゃってさ。オレやばいよな?どうたらいい?」 えぇっ。そんなこと言われてもっ。 「だからさ、もうこれは彼女作るしかないと思うんだよ」 そう意気込むけれど・・・。 「オレたち受験生じゃん。入試まであと1ヶ月もないよ」 そんなことやってる場合じゃないよ? 「分かってるよ。だから、それを目標にするんだよ。オレは何がなんでも合格して、そんでもって、可愛い彼女を作るんだ!」 と勢いよく言うと、ガッツポーズをした。 鼻息荒い・・・。 「話聞いてくれてありがとな。ほんと昨日からやばくてさ。お前に話したら少し気が楽になったわ」 そう言って一人でスッキリした顔をすると、分かれ道で帰っていった。 いやいや、別に聞きたくて聞いたわけじゃないよ? お前はスッキリしてるけど、聞かされたこっちはなんだかもやもや・・・。 キスで、エッチで、一人エッチで・・・。 頭の中が、そういうことに侵されて行く・・・。 やめてよぉ。 なんでこんな時期にそんな話聞かすんだよぉ。
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