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【 エピローグ: 時を越えて 】
「名前は何て言うの?」
「私は、『サクラ』」
「『サクラ』さんか。日本らしい名前だね」
「うん。曾お祖父ちゃんが日本人なの」
「そうなんだ。だからか……」
「えっ……?」
彼の言った言葉が不思議だった……。
「何故か、君の瞳の中に、日本人と同じようなものを感じたから」
「そうなの……?」
「ああ、君の瞳に映る綺麗な満月が、そう感じさせてくれた」
私は、もう一度、彼に強く抱きついて、涙を流しながら笑顔になっていた。
「僕の名前は、『零』」
「えっ? 『零』さん……?」
驚いて少し彼から体を離す。
「うん、そうだけど、何かおかしかった?」
零さんは、笑いながら私の顔を不思議そうに覗き込む。
そのやさしそうな表情に、私は初めて彼の前で、
大きな笑顔を作った。
「ううん、何でもない……。零さん、ありがとう……」
――きっと、これは、曾お祖父ちゃんが繋いでくれた縁だと思う。
天国から、私にプレゼントしてくれたんだと思う。
私たちは、ふたり向き合い、恥ずかしそうに笑い合う……。
すると、私たちの頭上で、何かがとても眩しく光り輝いたように感じた……。
ふと、その空を見上げると、綺麗な満月の中に、曾お祖父ちゃんの乗るあの『零戦』が、一瞬、飛んでいるように見えたんだ……。
その満月の月明かりは、2つの影を、やがて1つにして、私たちをやさしくいつまでも照らし続けていた……。
「曾お祖父ちゃん……、ありがとう……。私も、零さんに助けてもらったよ……」
『ブゥルルルルゥーーーーン…………』
(了)
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