42人が本棚に入れています
本棚に追加
ミッション9 唇の攻防戦
「ソユン……」
「はい」
王様のお顔が近づいてくる。これはアレでしょ。アレ。キ……キ……。
だー、「ダメっ!」
とっさに王様のお顔を両手で掴んで阻止した。不敬とか知らん!
「何故だ」
「私たち、付き合っていません」
「付き合う?じゃ今から付き合おう」
「ダメっ!」
「何故?」
「良くわからないのをはっきりしたいからダメっす!」
「だめっす?」
「そうっす」
何を言ってるんだ。私。
しばらく見つめ合って固まる。王様が自身の顔を掴んでいる私の両手を取り、頬にキスをした。
「……!」
「仕方ない。今日はこれでやめておこう。でもどうやってここを出る?おそらくしばらく開けてくれないぞ」
あんたが命令すればいいんだよ!する気ないだろ……!っていうか、共犯だろ?
みてろよ。王様。
「あそこに窓があります」
「出るには少し高くないか?」
背の高い王様が手を伸ばせば、窓の桟に届くくらいの高さにあった。
チラッと王様を見る。部屋には踏み台になるものは何もない。王様は「ん?」という顔をした。
「私は登れないぞ」
「私が登ります」
「どうやって?」
またチラッと王様を見る。
「まさか!」
「そのまさかです」
これは違うドラマで見たやつ。パクりじゃないよ。こうするしかない。
「早く卵を届けないと夕方の営業に間に合いません!子供達がお腹を空かせて待っています。ここを出るのを渋るって……まさか、王様も共犯じゃないですよね?」
目を細めて威圧してみる。
「まさかね……?」
あれ?今、ギクリってした?したよね?
「……仕方ない。乗れ」
「失礼します」
「重っ」
「何か言いました?」
「いや……何でもない」
「もう少し上げて下さい」
「重っ」
「怒りますよ!」
「すまぬ」
窓の桟に手をかけて壁をよじ登る。
「やったぁ。これで出れます。ちょっと待ってて下さいね」
「王様、卵をください。へい!パス」
そこら辺の石を運んでそれに乗り、背伸びをしてなんとか卵を受けとる。
「しばらくそこで頭を冷やして下さい。あばよ!」
「ソユン?ソユーン!ははっ、やられた」
◇◇◇
「ソユン、遅かったじゃない?……あれ、その服どうしたの」
(シアは、二人きりの時以外は『お姉ちゃん』ではなく私を名前で呼ぶ。まだ右議政様がいらっしゃるので、ソユンと名前で呼んでいる)
「…………というわけ」
「王様を置いてきたの?」
「うん」
王様と二人で閉じ込められるエピソードは、ドラマにもあるが、ドラマでは事件絡みで小屋に閉じ込められる。そこをジュウォン兄さんに助けられて三角関係ドロドロになるっていう……。
「はっはっはっ、さすがソユン殿」
右議政様が豪快に笑っている。夕方の部も見たいということで、右議政様はまだ帰っていなかった。
「王様はそろそろ新しい王妃様をと急かされている。私はシアをと思ったが、王様はソユン殿にぞっこんだと聞く。他の者が王様と婚姻を結んでも寵愛は得難いだろう」
「そんな人と結婚するの嫌だわ」
「そうだろうとも。パパンもお嫁にあげたくな~い」
「ちょ、ぞっこんとか恥ずかしい言葉を使うのやめてくださいよ」
でも、まぁ、これでシアを王妃にしたいがために右議政様が悪さをするということは無さそう。とりあえず良い方向に向かってて安心した。
「ソユン、もうさー、お嫁にいっちゃいなよ。何やかんやいって、ソユンも自然体じゃん。あんなに無礼な振る舞いしてて、許されているのソユンだけだよ」
それ、オカンにも言われた。
「カフェは任せてよ!この仕事大好き。楽しいから」
私もなんだけど?
「嫁に行くなら私が推薦しよう」
右議政様の推薦!?強力そう……でも、今のところ大丈夫です。
「ソユン」
シアがこっちに寄ってきてと手招きしている。シアの方へ寄ると、耳元でこっそり話してくれた。
「パパン、王様の命令でお姉ちゃんの気持ちを探りに来たらしいよ」
「!」
「マジ焦ってるね王様。これからめっちゃ攻めてくるかもね」
「……勘弁してー」
最初のコメントを投稿しよう!