42人が本棚に入れています
本棚に追加
ミッション3 事件を解決せよ
背中から腰にかけて衝撃を感じ、意識を取り戻した。
痛ぁ……。
どうやら下に落とされた時にお尻を打ったようだ。猿ぐつわを噛まされていて、声を出せない。手足も縛られている。
ここはどこだろうか……あ、ドラマあるあるどっかの小屋の中だ。
日が暮れたのだろう。小屋の中は暗く、明かりといえば男が持ってきたぼんやりとした蝋燭の明かりのみだった。
二人の男がこちら見て何か話している。盗み聞きするためにまだ気を失っているふりをした。
「刑曹判書が始末するようにだってよ」
「ちょっと楽しんでからでもいいか?」
「しょうがねぇな、さっさと済ませろよ」
こっちの男は興味がないのか私の荷物をあさり始めた。
物騒な会話に冷や汗と鼓動が止まらない。手足も震えてきた。さすがに怖い。
男がじわじわ近づいてくる。
わわわわ、やめてっ!はじめてはジュウォン兄さんと決めてんだよ!
「おい、やめておけ!」
「なぜだ?」
「こいつの荷物を調べたが、見ろ。……この上等な風呂敷、高級そうな菓子……それに……手に握っていたこの筆……」
こいつ、めっちゃ焦っとる。そうだろ、そうだろ、おうおうおう、お前らよ、よく見ろよ。
その印籠が目に入らぬか!
「王の女か?」
そうじゃないけど、今だけそうだよ。どうだ?お前ら?王様を敵に回したら絶対捕まるよ、そんで処刑だよ?
「さすがにやばくねぇか?」
「あぁ……」
「ずらがろうぜ」
さっさと消えろ!!
男が扉を開き、逃げ出そうとしたその時、誰かの声がした。
開かれた戸から確認できたのは、内禁衛の武官様だった。武官様は鮮やかな刀さばきで、男達を捕らえた。他に捕盗庁の武官様も来ており、この方は小屋の中に転がっていた死体を調査し始めた。
助かった。ホッとしたよ~。ちょっぴり涙が出てきた。
内禁衛の武官様がこちらに気付いて近づいてきた。
……ん?あれ?
「ジュウォン兄さんー!」
「ソユン!大丈夫だったか?」
兄さんー!会いたかったよぉ。キリリとした精悍なお顔、引き締まった体!大好き!
思わず抱きついて兄さんの香りをくんくんする。兄さんとは小さな頃からの知り合いなので距離が近いのだ。
「大丈夫か?ソユン!」
え?その声は……?
「大丈夫ですよ。助けに来てくださったのですか?」
王様だった……。
ジュウォン兄さんから慌てて離れる。そうだよね。ジュウォン兄さんが来てるってことはそうだよね。いるよね。
「あぁ。そなたの家族からそなたが帰って来ないと訴えがあってな。それをたまたま耳にした。もしやと思い、山寺のあたりを捜索していた。事件に巻き込まれていたとは……無事で良かった」
そんなの武官様達に任せとけばいいのに、わざわざ来てくれたのね……。
王様は私の涙に気付くと、そっと拭ってくれた。
くっ、弱っている姿を見せるとは、不覚……。
「王様、あいつらは自分は犯人ではないと言っております。小屋で休もうとしたら襲われていた娘がいたと」
捕盗庁の武官様が報告にきた。
「いやいや、あの人を殺したかどうかはわかりませんが、私を襲ったのはこの人達です。その証拠に、襲われて、意識を失うまでに墨をつけました。バカって書きました。背中にあるかと」
「確認せよ」
「はっ!」
「証言どおり、犯人の一人に謎の字が書いてありました」
あ、カタ仮名だからね。
「ちなみに王様、私を始末するようにと刑曹判書様が言ったそうです。犯人が話していたのを聞きました」
「何?」
「直ちに調査せよ!」
これで事件は一気に解決かな。ややこしいことにならなくて良かった。
そういえば、忘れていた。謝らないといけない事があった。
「王様、すみません。王様がお忘れになった筆をダメにしたかも知れません」
「構わぬ」
「王様はソユン殿が返しに来てくれるだろうと、わざと忘れたんですよね」
ソン内官様がニヤリと笑った。ドラマあるあるいらんこと言う内官。
「こやつ!」
王様はソン内官様をポカッと叩いた。秘密をばらされたとあらば面目も潰れる。
でも、こういう内官を側に置いているということは、王様は堅苦しくない方なんだろう。
「結果的に助かりました。ありがとうございました。王様の物って分かりやすい印が着いていたので、犯人が恐れをなして逃げて行きました」
「そうか。それは良かった」
うっ、イケメンの笑顔、破壊力すげぇ。
「ご家族が心配しておる。家まで送ろう」
「王様、捕盗庁の武官に送らせては?」
ジュウォン兄さんが提案する。それでいいよ。ジュウォン兄さんが送ってくれたら嬉しいけれど、勤務中だよね。
「いや、私が送る」
この後、王様が私を送ってきたことによりお父様が舞い上がってしまい大変だった。周りから固める作戦なのか?王様手強い。
◇◇◇
後日、私はシアと反省会を開いた。
「え!王様とのフラグ立ちまくりじゃん!」
「うん……何でだろうね?」
ドラマ通りではないけれど、運命からは逃れられないのだろうか?シアも難しい顔をしている。
「シア……あなたのお父様が手を組んだ相手は捕まったし、大丈夫だよ」
シアの父親は刑曹判書から銃を手に入れようとする。王妃にするための買収などでお金がいるため、犯罪に手を染めだすのだ。
「そうね……。私は王様派だけれど、王妃になることは別に望んではいないんだ。家の没落を免れたいの。その方法がお父様が望んでいる王妃になることだと思っただけで……お姉ちゃん、ぐれぐれも気をつけて行動してね。怪我とかが心配だよ。お姉ちゃんがまた死ぬのを見たくないからね」
「シア……」
──没落からは絶対守るからね!
最初のコメントを投稿しよう!