42人が本棚に入れています
本棚に追加
ミッション4 王様をフォローせよ
事件からしばらくして、私は王様に呼ばれ寝殿(王様の居所)にいた。さほど広くない部屋だが、お高そうな丁度品がいやみにならずにセンスよく飾られている。正直に何でも話せそうな落ち着いた空間だった。
「先の事件について、すべて解決した。そなたの暗殺を指示したという刑曹判書は銃の密輸の常習犯だった。長年に渡り密輸に手を染め、知りすぎた部下を殺したようだ。他にも殺された者が何人もいる。私の管理が甘かったばかりにそなたも事件に巻き込んでしまった。すまなかった」
「王様のせいではありません」
「今回の事件の解決は、そなたの証言があってこそだった。そこでだ、褒美をやろう」
「ソン内官」
ソン内官様が巻物と小箱を持ってきた。小箱にはお金が、巻物は屋敷の権利書だった。
「子供かふぇ?を開きたいそうだな。やってみるがよい」
いやいや、貰いすぎでしょ。
「私には過ぎた物です。頂けません」
「かふぇを開いて欲しいのだ。子どもをを救う場として。足らぬ事があれば私が個人的に出資する。民のためにやってはくれぬか?」
これまたドラマとは違う展開だわ……。また妹とカフェを開いたら楽しいだろうけど……。王様とつながりができちゃうよね……。面倒な事にならないなかな……。
「駄目か?」
王様、めっちゃしゅんってしてる!やめてー。断りにくいじゃん。……でもまぁ、一生懸命に褒美を考えて下さったんだろうな……。
「いえ、どんなカフェにしようか考えていました。ありがとうございます!頑張ります!」
……承諾してしまった。
「それと……あー、」
コホンと王様が咳をした。
「ソ武官とはどういう仲なんだ?……いつもああやって抱きついているのか?」
「え?……あぁ、あの時ですね!そうです。いつもあんな感じです。挨拶みたいなものです」
「そうか……」
「ジュウォン兄さんとは小さな頃からの知り合いで、強くてカッコよくて昔から大好きなんです!」
そう、前世からファンだぜ。
あ、ヤバい。言い過ぎたかも……。王様、俯いてしまってあからさまに沈んでるよ……。ソン内官様があちゃーってなってる。気まずい……。フォローしとこ!
「お、王様もお優しくて素敵ですよ!」
「そうか」
王様のお顔が明るくなった。とりあえず良かった。
「私にもその……ソ武官と同じように挨拶をしてくれぬか?」
王様が遠慮がちにつぶやいた。
「いやぁ、それは流石にできません」
「冗談だ。忘れてくれ……」
◇◇◇
「ということで、一緒にやろう!シア」
今日は事の顛末を報告をしに、シアのお屋敷にやって来てきた。
「お姉ちゃん……すごい展開で頭が追い付かないわ」
前世の記憶が戻ってから、#シア__· ·__#の評判はうなぎ登りに良くなっていた。あの意地悪で傲慢な令嬢は、今やお人好しで謙虚な完璧な令嬢に生まれ変わったと。
「悪い話ではないでしょ?シアの評判をもっと上げる事ができるよ。王様も来るし、王妃になるチャンスが増えるよ!」
それに、しっかり者の妹がいてくれると心強い。
「そうね……。やってみようかな。楽しそうだし」
「うん、やろう」
「よしっ、やるわ!メニューとか考えよう」
「お嬢様、旦那様がお見えです」
旦那様?シアのお父様?ということは右議政様!?緊張する。
「お通しして」
でたー!
右議政様、悪役オーラすごい。お顔はドラマあるある、見慣れたベテランメンバーってやつ。
「初めまして。カン·ソユンと申します」
「話は聞いておる。娘と仲良くしてくれているそうだな。王様から屋敷を賜ったとか?」
「パパン、今度ソユン様とそのお屋敷で子供カフェを開くことにしたの」
え?パパン?パパンって言った?
「子供かふぇ?」
なんだそれは?変なことに娘を巻き込むな。と威圧的な顔で睨まれたので説明しようではないか。
うぅ……右議政様、怖いよ。動悸がするよ。
「貧しい子どもが気軽に集える茶屋を開こうと思います。王様も賛同して下さいました」
「パパン、食材集めとか経営とか手伝ってね」
「いいとも。シアちゃんの為ならパパン頑張るよ~」
さっきまでの悪役特有の威圧的オーラはどこへやら。目尻を下げて、デレッデレになっている。
右議政様、キャラ違ってない?娘の前ならそんなキャラなの?
「ソユン殿、そなたと仲良くしだしてから娘は変わった。以前は親の私も手をこまねいておったのだが、今や立派な淑女だ。かふぇの事は私も最大限協力しよう。これからもよろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。右議政様にもご協力いただけるとは、とても心強いです」
──それから私たちは、右議政様を交えてカフェの経営について、色々決めていった。大まかな事が決まると、右議政様は来客があるからとその場を辞した。
「右議政様、めっちゃいい人じゃん。頼りになるし。ドラマでは何であんな事になったんだろうね?」
「娘を溺愛するあまりよ。パパン~って言っとけば何でもしてくれるの」
「それで我が儘シアが誕生したのね」
「そう。でももう我が儘じゃない。お姉ちゃんとカフェ経営を成功させて、パパンの評判を上げるわ」
「うん、そうしよう。右議政様が評価されるのは私も嬉しい」
「ありがとうお姉ちゃん。さぁ、まだ決めなければいけない事がたくさんあるよ」
「うん、どんなカフェにしようかな」
──この日、シアと私は夜更けまでカフェについて話あったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!