ミッション4 王様をフォローせよ

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ミッション4 王様をフォローせよ

 事件からしばらくして、私は王様に呼ばれ寝殿(王様の居所)にいた。さほど広くない部屋だが、お高そうな丁度品がいやみにならずにセンスよく飾られている。正直に何でも話せそうな落ち着いた空間だった。   「先の事件について、すべて解決した。そなたの暗殺を指示したという刑曹判書(ヒョンジョパンソ)は銃の密輸の常習犯だった。長年に渡り密輸に手を染め、知りすぎた部下を殺したようだ。他にも殺された者が何人もいる。私の管理が甘かったばかりにそなたも事件に巻き込んでしまった。すまなかった」 「王様のせいではありません」 「今回の事件の解決は、そなたの証言があってこそだった。そこでだ、褒美をやろう」 「ソン内官(ネガン)」    ソン内官様が巻物と小箱を持ってきた。小箱にはお金が、巻物は屋敷の権利書だった。 「子供かふぇ?を開きたいそうだな。やってみるがよい」    いやいや、貰いすぎでしょ。 「私には過ぎた物です。頂けません」 「かふぇを開いて欲しいのだ。子どもをを救う場として。足らぬ事があれば私が個人的に出資する。民のためにやってはくれぬか?」    これまたドラマとは違う展開だわ……。また妹とカフェを開いたら楽しいだろうけど……。王様とつながりができちゃうよね……。面倒な事にならないなかな……。 「駄目か?」  王様、めっちゃしゅんってしてる!やめてー。断りにくいじゃん。……でもまぁ、一生懸命に褒美を考えて下さったんだろうな……。 「いえ、どんなカフェにしようか考えていました。ありがとうございます!頑張ります!」  ……承諾してしまった。 「それと……あー、」  コホンと王様が咳をした。 「ソ武官とはどういう仲なんだ?……いつもああやって抱きついているのか?」 「え?……あぁ、あの時ですね!そうです。いつもあんな感じです。挨拶みたいなものです」 「そうか……」 「ジュウォン兄さんとは小さな頃からの知り合いで、強くてカッコよくて昔から大好きなんです!」  そう、前世からファンだぜ。  あ、ヤバい。言い過ぎたかも……。王様、俯いてしまってあからさまに沈んでるよ……。ソン内官様があちゃーってなってる。気まずい……。フォローしとこ! 「お、王様もお優しくて素敵ですよ!」 「そうか」  王様のお顔が明るくなった。とりあえず良かった。 「私にもその……ソ武官と同じように挨拶をしてくれぬか?」  王様が遠慮がちにつぶやいた。 「いやぁ、それは流石にできません」 「冗談だ。忘れてくれ……」 ◇◇◇ 「ということで、一緒にやろう!シア」  今日は事の顛末を報告をしに、シアのお屋敷にやって来てきた。 「お姉ちゃん……すごい展開で頭が追い付かないわ」   前世の記憶が戻ってから、#シア__· ·__#の評判はうなぎ登りに良くなっていた。あの意地悪で傲慢な令嬢は、今やお人好しで謙虚な完璧な令嬢に生まれ変わったと。 「悪い話ではないでしょ?シアの評判をもっと上げる事ができるよ。王様も来るし、王妃になるチャンスが増えるよ!」  それに、しっかり者の妹がいてくれると心強い。 「そうね……。やってみようかな。楽しそうだし」 「うん、やろう」 「よしっ、やるわ!メニューとか考えよう」 「お嬢様、旦那様がお見えです」  旦那様?シアのお父様?ということは右議政様!?緊張する。 「お通しして」    でたー!  右議政様、悪役オーラすごい。お顔はドラマあるある、見慣れたベテランメンバーってやつ。 「初めまして。カン·ソユンと申します」 「話は聞いておる。娘と仲良くしてくれているそうだな。王様から屋敷を賜ったとか?」 「パパン、今度ソユン様とそのお屋敷で子供カフェを開くことにしたの」  え?パパン?パパンって言った? 「子供かふぇ?」  なんだそれは?変なことに娘を巻き込むな。と威圧的な顔で睨まれたので説明しようではないか。    うぅ……右議政様、怖いよ。動悸がするよ。 「貧しい子どもが気軽に集える茶屋を開こうと思います。王様も賛同して下さいました」 「パパン、食材集めとか経営とか手伝ってね」 「いいとも。シアちゃんの為ならパパン頑張るよ~」  さっきまでの悪役特有の威圧的オーラはどこへやら。目尻を下げて、デレッデレになっている。  右議政様、キャラ違ってない?娘の前ならそんなキャラなの? 「ソユン殿、そなたと仲良くしだしてから娘は変わった。以前は親の私も手をこまねいておったのだが、今や立派な淑女だ。かふぇの事は私も最大限協力しよう。これからもよろしく頼む」 「こちらこそ、よろしくお願いいたします。右議政様にもご協力いただけるとは、とても心強いです」  ──それから私たちは、右議政様を交えてカフェの経営について、色々決めていった。大まかな事が決まると、右議政様は来客があるからとその場を辞した。 「右議政様、めっちゃいい人じゃん。頼りになるし。ドラマでは何であんな事になったんだろうね?」 「娘を溺愛するあまりよ。パパン~って言っとけば何でもしてくれるの」 「それで我が儘シアが誕生したのね」 「そう。でももう我が儘じゃない。お姉ちゃんとカフェ経営を成功させて、パパンの評判を上げるわ」 「うん、そうしよう。右議政様が評価されるのは私も嬉しい」 「ありがとうお姉ちゃん。さぁ、まだ決めなければいけない事がたくさんあるよ」 「うん、どんなカフェにしようかな」  ──この日、シアと私は夜更けまでカフェについて話あったのだった。
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