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#New STORY
駅を降り、鎌倉高校に向かう有名な坂道を登っていく。
すぐ右に入っていく通りを道なりに進み、住宅街の中へ進んでいく。
「懐かしいなぁ・・・」
(この街に別れを告げたのは3ヶ月前か・・・)
思わず出た言葉に記憶が重なるように反応した。
「でも、まだ3ヶ月前なのか・・・」
そう開き直ったとも思える言葉を言いながら、彼女は目的のお店にむかった。
少し痩けた感じのある顔には、笑みが浮かんでいる。
彼女の思いそのままに懐かしさを感じながら、彼女は目的のお店を見つけると、無邪気な子供のように駆け出していた。
そのお店は白い外壁に赤い屋根が特徴の喫茶店だった。
少し離れた湘南の海から香る潮騒が、何となく思い出を語ってきている。
お店の前に立つと、何故か緊張し始めていた。
(なんて言えば良いのかな・・・)
彼女の緊張は、照んないに入った時の一言目にどんな言葉を話せば良いのか思いつかないせいだった。
喫茶店の入口まで数メートルの距離。その前までは走ってきたのに、ここに来て足は止まり、店に入る勇気が出せないでいる。
「美咲ちゃん?」
不意に店の小窓から声が聞こえた。
美咲が顔を挙げると、小さな窓から手を振る若い女性の顔が見えた。
「由奈さん・・・」
思わず美咲の目に涙が浮かんできた。
由奈は顔を引っ込めると、店の扉を開いてわざわざ外に出て来てくれた。
「どうしたの?こんなところに立っていて・・・。おいで、お店に来たんでしょう」
そう言って由奈は美咲を店に誘った。
美咲が店の中に入ると、数人のお客がコーヒーを飲みながら談笑している。
「美咲ちゃん?久しぶりだね」
カウンターの中にグラスを拭きながら声を掛けてきたマスターの顔も懐かしい。
「お久しぶりです」
そう挨拶をしたが、すぐに「と言っても、あれからまだ3ヶ月しか経っていませんけど・・・」というと、由奈とマスターの田辺誠一郎は互いに顔を見合わせてから、「そうだね」と二人声を合わせて答えてきた。
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