幼少期

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記憶を辿っても、私には小さい頃から両親の思い出が無い。 いや、私がごく小さい頃母親だと名乗る女が、会いに来ていたらしが、全く憶えてない。 そう、私は気付いた時には、周りにたくさんのお兄ちゃんやお姉ちゃんが居たのだ。 私の家は、あおぞら学園。 児童養護施設に預けられた子供だから。 私には両親が居ないが、お世話をしてくれる先生は居るし、同じ環境の友達は沢山居てる。 意地悪な子も居るけど、小さい頃はお兄ちゃんやお姉ちゃんが、面倒を見てくれた。 節分の豆まきを、皆んなで楽しんだ後 「陽菜ちゃ〜ん 来年からは、小学生よ ランドセルや学校で必要な物が、明日此処に届くから、好きなの選んでね」 この園で、私が1番好きな橘先生が、笑顔で話し掛けてくれた。 「えっ?橘先生! 明日ランドセルがくるの? 保育園のお友達は、みんな買って貰ったって自慢してたから、心配してたんだ」 「そうなんだ ごめんね 和人君も来年小学生だから、一緒に選ぼうね」 和人君は、最近この園に来た男の子。 いつも、園にある本を部屋の隅で独り読んでる変わった子だから、一緒に遊んだ事が無い。 でも、和人君だって嬉しい筈。 隅で独り本を読んでる和人君の側に行き 「明日ランドセル来るんだって 何色が有るのかな? それに、筆箱や鉛筆も」 和人君は、チラリと私を見て 「ママと買う約束だったのにな おまえのママって、会いに来ないよな 此処にいつから居てるの?」 全く嬉しそうじゃ無いし、私にはママの記憶なんて無いから。 「気が付いたら此処に居たよ だから、ママもパパも知らない」 「そう、捨てられたんだ」 この一言で初めて、私は両親から捨てられたんだと意識が芽生えた。 この思いは、これからずっとこれから先も、私の心に付き纏う事になる。
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