おかえり

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「おやすみ」  夢心地の中、そう呟く君の声を聞いた気がした。  今日は、沢山歩き回って、君と楽しい時間を沢山過ごすことが出来た。 踊りだしてしまいそうな心とは別に、体は鉛のように重く、君の声に包まれるように海の奥底に沈んでいく。  朝、起きると隣に君はいなかった。 空いてる場所は、冷たくて、そこには最初から誰もいなかったみたいで 焦る気持ちを静めるために「おはよー」なんて、返事があるわけじゃないのに、独り言には大きすぎる不安を吐き出した。  わざとゆっくりと布団から抜け出して、トイレへ向かう。 その際に、さりげなく隣のお風呂場ものぞく。 勿論ラッキーなことはなくて、流した水の音だけが嫌に響いた。  何事もなかったように布団へ戻り、目を瞑る。 次起きた時、君が戻ってきていて、二度寝から起こしてくれるんじゃないかって、そしたら、朝ごはんを一緒に食べよう。そんな昨日の続きを思い描いていると、意識を手放すことが出来た。  お昼過ぎに、空腹で目が覚めた。夢の中で過ごしすぎたのか、頭が重い。 意識を手放す前に思い描いたようにはなっておらず、一人分のそしゃく音が聞こえる。  空に赤みがかかり、遠くでカラスの鳴く声が聞こえる6時 布団から出ない時間を過ごし、何も成果のない一日に少し罪悪感を覚える。 日頃の運動不足と今日の怠惰で、ロボットのように動き出す。  せめてと、食べるもの用意しようと立ち上がった時 階段を駆け上がる音が聞こえた。 「ただいま!」  乱暴に開けられたドアの音と荒い息、その間をぬって出てきた君の虹のように綺麗なただいま。 強欲な自分は、そんな宝石を一生ここに閉じ込めておきたくなった。 「おかえり」 さっきまでの硝酸で溶かしたみたいな感情なんて、鍍金でコーティングして、虹で照らされた水たまりぐらいには綺麗に迎えるよ。
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