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結局の所、中和方法が確立するより早く滅ぶ。そんな目算がたった時、国は中和を諦めて回避を目指すことにした。
ユフが減衰するまで眠りにつくこと。何重にも完全密閉された容器に全てを封じ込めて未来を待つ。アヴァロン計画と呼ばれた。モードレッドとの戦いで致命傷を受けたアーサー王が体を癒やし、いつか遠い未来に復活することを求めたように。
250人を1単位として複数のコロニーを形成する。20から60歳までの者は1年に1人、管理者として順番に起床して異常の有無をモニタリングする義務を負う。異常が発生した場合はその回復に必要な人員が起こされる。各コロニーにはコロニー維持に必要な技術者が必要人数選定され、適宜不具合に対処することになっている。そして例えばユフが侵入した等、回復できないレベルの異常が発生すれば、全ての住民を起こす手順になっていたはずだ。その契約で私はニ番目にできたこのコロニーで眠りについた。
だが何かおかしい。通常であれば最低限の補助電源は生きていて、コロニー内はある程度の灯りが保たれているはずでは。それにこの埃っぽさ。空調が働いてないのか? なぜだ。電気系統や空調系統に異常があれば担当する技術者が自動的に起こされて修復がなされるはず。
……ここにいても仕方がない。マニュアルでは起床後に前任者から現況説明を受けるのだった。管理センターにいるだろう。そろりと起き上がり廊下に出る。やはり真っ暗。しんと足元が冷たい。
頭の中の地図に従い壁伝いにセンターに向かう。ザラザラした感触。とても嫌な感じだ。管理センターは電源が生きているのか廊下の奥にぼんやり光が漏れていた。蛍の灯りを求めるようにのろのろと向かう。
けれども前任者はいなかった。
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