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どうしたら……。途方に暮れる。
だがとりあえず仕事は済ませよう。まず数値の確認。一番重要な数値は0。コロニー内にユフは検出されない。ほっと息をつく。
それからコロニー内の観察。異常がないか。ゔゔゔと揺れるライトに浮かぶ各室を映すモニタを眺めると、私が眠っていた部屋でハッチが青く光っているのが見えた。その他の部屋は灯りが消えているせいで薄っすらとしか見えないが、目視できる異常はなさそうだ。
次は外気のユフ濃度の測定。外に出られるかどうか。幸いにも外部モニタは生きていて、妙な色合いだが明るかった。覗くと私の記憶とは大分異なりたくさんの木が生えていた。私が眠りについてから百五十年は経つのだから景色が異なるのは当然だ。けれども目の前に生えているのは見たこともないようなねじくれて尖った硬質な木。その枝葉は鋼のようだ。
これはユフの影響なのだろうか。けれども生えている。生きているのだろうか。ユフに適応した? 不思議だ。試料採取のプログラムを動かす。コロニー外で検体が集められ、自動的に分析される。解析にはしばらく時間を要するだろう。その間に調べなければならないこと。
ゆっくり後ろを振り返る。本来であれば明かりがついているはずの部屋の入り口から先は真っ黒な闇に落ちていた。電気系統の確認。そう思ってコンソールをタッチすると電気系統に異常はないと表示される。おかしいな。だから電気系統の担当者が起床しないのか。
そうするとそれ以前にセンサー系統がバカになっている可能性。ヘルプを開くとモニタが妙にブレて見えた。なんだか色々な不具合が積み重なっている。そんな気がする。まるで時間の経過で埃が積み重なるように。そうだそもそも埃が積み重なるという事象がおかしい。空調が壊れている。
喉奥から嫌な何かがこみ上げ、それを押さえつけてかわりにため息を吐く。
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