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複合エラーが発生している時はどうするんだったかな。それから私の前任者はどうしたんだろう。マニュアルでは引き継ぎを受けた後に眠りにつく予定では。
そう思ってヘルプをめくっていると試料解析完了のアラートが鳴る。
表示はレッド。
外は危険なユフ濃度。息が詰まる。時間の経過でユフが薄まるのを期待する計画だ。ユフの半減期はいつだろう。コロニーは理論上は眠った状態で千年は持つ計算で作られている。その間に、私たちはそれぞれ5、6年分の人生を管理者として消費する計算。
でもまだ私が起きたのは一回目で、不測の事態の発生は想定されていないしそもそも外に出られることを期待しないタイミング。検査結果に暗澹たる思いを抱くけど、まだ絶望するべき時期ではない。コロニーに入る前に誰しもそういった心理的な訓練を受けている。それにその訓練を行ったのは他ならぬ私だ。主観的には3日ほど前に。でも、先が見えないのはキツいな。
結局のところ現状確認からだろう。不確実な点を一つずつ潰す。
体調も悪い。体が重い。だが廊下の様子を確認しようと意を決して暗闇に足を踏み入れた。そうすると目が慣れてきたからだろうが妙なことに気がつく。廊下の電気は点いていた。光は感じられないけど、確かに点灯中サインが薄青く光っている。ようするに、スイッチはオンという表示。
そしてコロニー内に堆積されていると思われた埃もまた存在しなかった。手を伸ばすと私が埃と認識するそのノイズはジジジと指を透け、床を撫でるとツルツルしている。
そうすると、幻聴幻覚の類? このコロニー自体には異常はなくておかしいのは私の頭や体? そんな仮定が成り立つ。
思わず袖から伸びる両手両足に目を落とすが、他に異常は見当たらない。でも、何か違和感があった。何だろう。コールドスリープ中は身体機能が極めて低下する。その影響がまだ残っているのだろうか。体が重だるい。
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