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わけのわからない事態に苛立っている。
落ち着いているつもりでも意外と冷静を欠いていただろうか。ひとつ深呼吸。ぺちぺちと両頬を叩く。落ち着け落ち着け。
気を取り直す。体調が悪いだけだ。
『お名前を教えて下さい』
「パオロ・ルッソ」
『声紋確認が取れました。本日はどうされましたか』
「目と鼻がおかしい。他にも不具合があるかもしれない」
『了解しました。スキャンを開始します』
優しげな機械音声の問診。少し安心する。
ベッドに横たわると様々な光が照射された。これで不調の原因が判明するはず。そう思っていたのに。
『エラーが発生しました。再度スキャンします。よろしいですか?』
「はい」
『エラーが発生しました。再度スキャンしますよろしいですか?』
何度繰り返して発生するもエラー。
その声に再びさざなみのように不安がわきあがる。床面のぺとりとした冷たさ。両肩に力が入っているのに気づく。こういう時こそ落ち着かなければ。
大量のエラー。流石に機器が壊れているのだろう。そうに違いない。私に異常があるかどうかにはかかわらず機器に異常が発生している。そうに違いない。それで説明がつく。
だがこのコロニー自体の異常。首筋がゾワリとする。それから目眩も。
万一コロニーに不具合が発生すれば生存は絶望的だ。だが。頭を振って思い直す。だが内部環境保全と外部侵入遮断は必須事項だ。強固に設計されているはずだ。セーフガードが何重にも敷かれている。そう容易に崩壊するとは思えない。
いずれにせよ原因がわからない。それなら全員を起こして協議するより他はない。重苦しい予感に背中に一筋、汗が垂れた。
その前に前任者に確認をとらなければ。何か情報があるはずだ。
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