18人が本棚に入れています
本棚に追加
薄暗い廊下をハッチがある部屋に向かう。
感覚がぐにぐにする。先程よりふらつく。気持ち悪い。視界の歪みが激しくなる。不具合が増大している。なんだこれは。訳の分からない焦り。苛立ち。五感の不具合は精神にダイレクトに影響する。気持ち、悪い。
部屋は静まり返っていた。自分のハッチの並びのうす青く光るアルベルトのハッチの中には誰もおらず、かわりに大量の粘り気のある水が溢れて床にこぼれ落ちていた。
アルベルトはどこにいる?
この水はどこから来た?
混乱しているとその水たまりがぽちゃりと揺れた、気がした。駄目だ、やはり感覚がおかしい。
「アルベルト?」
静まり返った室内にまたぽちゃりとだけ音が響く。
ハッチを開く前はバイタル反応があったということはどこかにはいるはず。だが呼びかけても誰もいない。すれ違った? 向かうなら管理センター。そういえば生体感応センサがあったはずだ。それで位置が、分かる。
動けば動くほど体は鈍重になり、まるで壁に溶けるようだ。なんとかもどって生体感応パネルを開くけれど、人を示す光点は一つも表示されていない。ハ、ハこれじゃ私も生きていないじゃないか。
糞。これも不具合か。どこからどこまでが、不具合。
大きくため息を吐くとその音にぜぇ、という音が混じった。苦しくはない、が、その音は確かに聞こえたようで、幻聴のようには思われなかった。
最初のコメントを投稿しよう!