二人の天使

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二人の天使

 フランスのパリ。かの有名なシャンゼリゼ大通りからほど近い路地の裏手にある小さなカフェ。店の前にある黒い看板には、白いチョークで書かれたCafé Ruffier(カフェ・リュフィエ)と、Le meilleur sourire(最高の笑顔)の文字が踊る。二階から伸びる(ひさし)はシックな緑色で、重厚感のある茶色い壁とほどよく調和している。店の扉を開ければ、窓側にそびえ立つ大きな柱時計が客を出迎える。時計の針は午前九時五十五分をさしており、店のオーナーであるアルベール・リュフィエは開店準備に勤しんでいた。 「おや、早速現れたようですね」  アルベールがそう呟いた直後、ドアに付いたベルが高い音を奏でた。ドアの前には、黒い帽子を深々と被り、身長が一九〇センチメートル近くありそうな大柄な男が立っていた。
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