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「やはり」
アルベールは柔らかい笑顔で男に声をかける。
「開店まであと五分ほどですが、お茶の時間に致しますか? ジェラルド」
「やはり、ときたもんか……俺がここに来るのを予期していたような言い草だな。ったく、アルベールの千里眼には毎回驚かされるぜ」
ジェラルドは扉を閉め、革靴を踏みしめながらカウンターの方へと歩く。肩に担いでいた大きなカバンをゆっくりと床に下ろし、椅子に腰かけた。
アルベールは、カップを手に取りながら答える。
「毎日のように店に入り浸るあなたの行動パターンなら読めていますよ。実に容易いことです」
「よく言うぜ。それを言ったら、俺だって……」
ジェラルドが言い終わらないうちに、アルベールはドアの方へと目を向け呟いた。
「おや。どうやら、今日も迷える子羊が来たようですね」
その刹那、ドアのベルが再び鳴った。
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