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「あら、ここって……私、いつの間に」
そう言いながら辺りを見回しているのは、見た目が十六、七歳ぐらいの、茶色いふわふわとした天然パーマの少女。彼女はアルベールと目が合うなり頬を紅潮させ、慌てて後ろを振り返る。彼女がドアの取っ手に再び手をかけようとした時、
「いらっしゃいませ、マドモアゼル」
アルベールの声に驚いた少女は肩をビクッと跳ねさせ、ゆっくりと彼の方へ向き直った。
「マ、マドモアゼルって……私のことですか?」
「ええ、もちろん。まずはお茶の時間に致しましょうか? あなたは何か困り事を抱えているようです」
アルベールの青い瞳に映る少女の表情は、困惑の色を隠せないでいた。彼女の意に会することなく、アルベールはブロンドの髪を揺らしながら少女の方へと近づく。
「あ、あの……ここって、喫茶店ですよね? 話したところで解決されることではないし、かといって警察が動いてくれる確証もないし……でも、お茶なんて飲んでいる暇はないわ」
少女の言葉を聞いたジェラルドが「カッカッカ」と大きな声で笑う。
「何がおかしいの?」
立腹した声色の少女に対し、ジェラルドは、
「警察が動くか分からない案件こそ、コイツの得意分野だぜ、お嬢ちゃん」
顎をくいと上げ、アルベールを示す。
少女は驚いた表情でジェラルドを見つめた後、目の前にいるアルベールへと視線を動かした。
「……でも、探偵とかではないですよね?」
「探偵ではありませんよ。ただ、探し物が少し得意なだけです。あなたがここを訪れたのには意味がある。良かったら、僕に話していただけませんか? 力になれるかもしれません」
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