3−1

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 深夜、ぶるりと身を震わせながら目を覚ますと、暗がりの中、チカチカと点滅する仄かな光があった。何かと思って目を凝らすと、脱ぎ散らかしたままの衣類の中、スマートフォンが光っているのが見える。  のろのろと起き上がり、スマートフォンに手を伸ばしかけたところで、横からさっと別の手に掠め取られた。驚いていると、その手の主はスマートフォンをソファの上に放り投げ、裸のままだった暁の体を抱き上げる。 「父さん……?」  呼びかけると、龍巳は額に口付けてきて、そのまましっかりとした足取りで浴室へと向かう。  あらぬことを想像してしまったが、龍巳は浴室の戸を潜り、暁を湯船の中へそっと下ろすと、踵を返して出て行こうとする。 「父さん」  冷えた体に染み渡るお湯にほっと息をつきながら、再度呼びかける。振り返らない背中に向かって言葉を重ねた。 「ありがとう。父さんも……入らない?」  自分の口から飛び出た台詞に驚き、狼狽えながらもじっと龍巳の背を見つめ、答えを待つ。  大柄なわけでもなく、暁と大して変わらない背格好のはずだが、どうして父親の背中というのは大きく見えるのだろう。  その大きな背中が揺れ、こちらを振り向くのに合わせて後方に隠れる。 「……」  また、龍巳が何かを言いかけてやめる素振りをした。最近はいつもこうだ。もともと口数が多い方ではないが、それに輪をかけて無口になった。  そして、またあの顔をする。ひりっとした痛みを堪えるような。 「父さん?どうし……」  どうしたの、と問いかける前に、龍巳はずんずんと近付き、怖いほど真剣な目つきで屈み込んだかと思うと。 「っ……ん……」  唐突に、啄むようなキスが降ってくる。角度を変え、繰り返すうちに、互いの口腔を貪り合う深いものへと変わっていく。 「んっ、……んぅ……」  浴室に響く濡れた音に煽られ、湯船の中で明らかに主張し始めた自身を手淫しようと手を伸ばしたのだったが。 「っ……あ、……」  ぱっと唇を離され、思わず残念がる声を上げてしまうと、龍巳は囁くように言った。 「上がったら作業部屋に来い。見せたいものがある」
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