最終話 運動会、空駆けるリレー

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最終話 運動会、空駆けるリレー

 リレー開始直前、参加する選手はそれぞれのコースのスタート地点に別れて待機していた。一走目の選手はグラウンドの中央、二走目の選手は校舎のそば、三走目の選手は実況席のあるテント前に立っている。  ぼくはコネクトコマンドを使い、ソラとリクと最後の作戦会議を行った。一、ニ走目はぼく、三走目はソラとリクがナビゲートすることになっている。 「もうすぐ最後の競技、ランド・セイルのリレーがはじまります! ここからは、ランド・セイルにお詳しい池畑(いけはた)先生をゲストに迎えます」  実況席を見ると、イケちゃん先生が静かな面持ちで座っていた。先生がマイクを握る。 「では詳しいルールを説明しましょう。このリレーでは、各学年から三名が参加し、合計六チームで酉紀(とりき)小学校最速の座をかけて争います。そして、レースの特徴といえば――」  パブリックビューイングの映像が、コース上に浮かぶドローンのカメラに切り替わった。校舎の廊下が映し出されている。 「走順によって異なるコースです。一走目は、狭く入り組んだ校舎の中を飛ぶコース。ツバサのコントロールがカギとなるでしょう」  しばらくすると再びカメラが切り替わり、学校全体を見下ろす映像が映った。 「二走目は学校の周囲を巡るコース。総合的なテクニックが試されます。そして、最後の三走目はグラウンドの上空を周回するコース。どれだけ速く飛び続けられるか、それが優勝につながります」  いつもの先生なら機械オタクの血が騒ぎ、嬉々として語るはずなのだが、いかにも冷静そうなコメント。保護者の目もあるので、我慢しているに違いない。  パブリックビューイングを眺めていると、ハヤトが近づいてきた。 「いやあ、今年はドローンまで使っててすごいよね」 「ぼくたちが勝つ所をしっかり映してくれそうで、嬉しいですよ」  ハヤトは少し微笑んだ後、鋭い目でぼくを射抜く。 「キミたちがどれだけ速くなったか、見せてもらおう」 「ええ、きっと驚くと思います」  ハヤトはぼくに背を向け、片手を上げて返事をした。  イケちゃん先生の解説が続く。 「注目すべきチームは、やはり六年生です。ランド・セイルのリレーがはじまって以来、一度も負けたことがありません。去年、圧倒的なスピードで優勝したのは皆さんの記憶にも残っていることでしょう。そして、そのライバルと目されるのが五年生。ウワサでは六年生に勝つために、恐ろしい特訓をしてきたと聞いていますからね。個人的には期待しています」  恐ろしい特訓をしたのはアナタでしょ、とぼくは心の中で先生にツッコんだ。 「――さあ、スタートの準備が整ったようです」  実況の声に、観客がスッと静かになった。  パブリックビューイングに、一走目の六人が一列に並ぶ姿が映し出される。 「十八人の選手たちが、これから学校最速の座をかけて争います。酉紀小学校運動会、最後を飾る空飛ぶリレー、いよいよ開始だ!」  ――位置について……よーい、スタート!  ピストルの音と同時に大きな歓声が沸き上がる。ついに戦いがはじまった。
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