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転校してから一週間。
放課後になると、グラウンドでソラとランド・セイルの練習をするのが日課となった。
練習の甲斐あって、一度も着地することなく登下校できるようになった。
ニワトリからスズメ程度にランクアップしたと思う。もう早起きする必要もなくなった。
けど、飛ぶスピードが遅く、周りの人にどんどん抜かされていくのが悔しい!
速く飛ぶ方法を教えてほしい、とソラに訴えたが、
「スピードを鍛えるのは後でもできる。今はツバサをコントロールスキルを磨くのが先よ!」
と怒られてしまった。
まあ、ソラの理不尽な――いや熱心な指導で上達しているのは確かだ。しばらくは大人しい弟子を演じておくとしよう。
「カケル、おはよ」
朝、家の前でソラと待ち合わせ、空の通学路を行く。
ぼくの家とソラの家は同じ地域にあるので、自然と一緒に登下校するようになっていた。
特にやましいことはない。ぼくはおしとやかな子がタイプなんだ。
「ソラ、ちょっと聞きたいんだけど」
「師匠に何でも聞くがよい」
「……同じクラスにリクって子がいるよね? どういう子か教えてほしいんだ」
「それはね――って、ランド・セイルのことじゃないんだ。ランド・セイル馬鹿のカケルにしては、めずらしい」
ソラは意外そうな顔をした。ランド・セイルに夢中なことは否定しないが、もっとオブラートに包んだ表現をしてほしいもんだ。
「リクは、背が高くてスポーツもできるから、クラスのリーダー格って感じかな。ひそかに憧れている女子も多いみたい。まあわたしはタイプじゃないね。もっと知的な方が好み」
ソラの好みはさておき、リクはぼくが想像した通りのタイプだ。
となると、嫌われている理由としてはアレか。
――てめえ、リーダーのオレよりチヤホヤされてんじゃねえ!
という理不尽なもの。転校早々、トラブルの予感……。
振り返ると、ツバサから伸びる光がいつもより弱々しい気がした。
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