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ぼくはゆっくりとソラの近くに着地した。
(家に帰るぐらいのバッテリーは残ってそうだな)
日も暮れてきたし、今日の練習はこれで終わりにするか。ソラが眉間にしわを寄せ、ため息をつく。
「――やっぱりバッテリーが切れちゃったか」
「どういうこと?」
「ブーストは、かなりバッテリーを消費するんだよね。連発できないのが難点なの」
あれだけの加速だ。一気にバッテリーを消費するのは納得できる。
「けどターンだって同じだろ? リクも連発できないのなら、五分五分だ」
「それが違うのよ。ターンがどういうものだったか思い出して」
「たしか、二つのツバサのうちの一つから一気にエネルギーを……っとそういうことか」
「気づいたようね。ターンは一方のツバサからしかエネルギーを放たないけど、ブーストは両方のツバサからエネルギーを放つ。単純計算で、バッテリーを二倍消費するってわけ」
まさかブーストにそんな欠点があったなんて。
ソラが顎に手を当て、話を続ける。
「わたしの推測だと、一〇〇パーセントまで充電してあのコースを飛ぶ場合、リクならターンを四回使用できるはず。ランドマーク――つまり方向転換するポイントも四つ。リクは通過の度にターンを使えるわけね」
「もしかして、そこまで計算し、あのコースで勝負しようとしたんじゃ……」
「いやあ、リクはそこまで頭がよくないよ。きっと偶然ね」
ごく自然に馬鹿にされるリク。ちょっとかわいそうに思えた。
ターンを使えるのが四回ってことは、ブーストだとその半分の二回。どのタイミングで使うかは、慎重に見極める必要がある。
ぼくが悩んでいると、ソラが不敵な笑みを浮かべる。
「チッチッチッ。さっきわたしが『リクなら四回使用できる』って言ったでしょ?」
ソラは何が言いたいんだろう。ぼくは頭の中でソラの言葉を繰り返した。
……そうか。『リクなら』ということは『ぼくなら』違うって意味か。
「――専用コマンドを使える回数は、人によって変わるんだね」
「その通り! 体重が重い人ほど、バッテリーの消費が激しい。飛ぶために大きなエネルギーが必要だからね」
「じゃあリクより小さいぼくなら、ブーストをもっと多く使えるんだ」
「うん。リクよりもわたしよりも小さい、カケルならね」
ウフフ、とソラが笑った。
……いつか絶対に見下ろしてやる。
「カケルならブーストを三回は使えると思う。明日一〇〇パーセントまで充電して、コースを回ってみようよ」
「りょーかい」
大抵のスポーツは体が大きい方が有利。ランド・セイルなら体が小さい方が有利になるなんて、うれしい誤算だ。
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