4話 超加速のコマンド

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「勝負の日まで、ツバサのコントロールを徹底的に鍛えるよ!」  残り時間、ぼくはツバサのコントロールスキルを高めることに集中した。コントロールがうまくなればなるほど、飛ぶスピードは速くなる。方向転換する時もなるべく減速しなくてすむはずだ。  勝負の前日、ぼくと空は最後の練習を終えた。 「カケル、今日はこれで終わろう」 「りょーかい。いよいよ明日だね」 「できる限りのことはやった。一週間前とは見違えるほど速くなったと思う」 「師匠のひいき目じゃなくて?」 「うん。本当」  少し疲れたので、ぼくとソラはブランコに座って休憩した。  体を前後にゆらすと、ブランコが動き出す。ランド・セイルで飛ぶ時と、少し違う心地よい風を体に受けた。 「ブーストにスリップストリーム。この二つの武器で、あれだけあった差をどこまで埋められたのかな」 「わたしの見立てでは、勝率は三割って所ね」 「おいソラ。さっき速くなったって言ってたじゃん」 「それと勝敗は別。経験の差は歴然としてるんだし、三割もあれば上等よ」  それはそうなんだけどさ、とぼくは答えた。  勝負するからには勝ちたい。せめて五分五分になるような策があれば。 「さて、そろそろ帰ろっか」 「――そうだね」  最後にブランコを大きく一こぎ。ブランコが後ろに下がった時、ぼくは足を曲げる。瞬間、正面から強い風が吹いてきた。  これは力一杯こがないと! 思い切り足を伸ばすと、ぼくのブランコは高く前に上がった。  ふと頭の中で何かがひっかかった。  ――激しい向かい風に対抗するため、ぼくは力一杯ブランコをこいだ。  これって、ランド・セイルも同じなんじゃないのか?  ――空気抵抗が大きいと、多くのエネルギーを放つ必要がある。つまり、バッテリーを多く消費する。  ぼくはブランコから勢いよく立ち上がる。これなら、五分五分の勝負ができるかもしれない。 「ちょっと、カケル。どうしたの?」 「……ふふ」 「へ?」 「ふふふふふふふふふふふふ」 「え、ちょっと気持ち悪いんですけど」  ぼくはソラに向かってニヤリと笑う。気持ち悪かろうが構わない。 「ソラ、話したいことがある」 「え! 急に何?」  ぼくは思い付いたばかりの策を話す。  最初、ソラはなぜかワクワクするような目でぼくを見ていたが、すぐに怒りの表情に変わり、最後は真剣な眼差しになった。何だかよく分からない反応だ。 「……うん、わたしもいけると思う」 「よし! 勝てる見込みが出てきたぞ」  ソラがクスリと笑い、ぼくに手のひらを向ける。  次の瞬間、パチンと心地よい音が辺りに響き渡った。
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