5話 決戦、勝利のカギは節約術

2/5

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「ソラ。作戦通り、スリップストリームを使う」 「オッケー、リクの背後に張り付いて」  ぼくはリクの背中を追う。前回の勝負の時と違い、リクとの距離が広がることはない――が、ほんの少しずつしか距離が縮まらない。ランド・セイルのカスタマイズと一週間の経験値では、これが限界ってことか。  この差ではスリップストリームの効果はない。それなら――、 「いくぞ、”ブースト”!」  コマンドを唱えた瞬間、ぼくの体がグンと前に押し出される。リクとの距離は一気に縮まり、スリップストリームについた。けど、抜き去るにはもう一歩足りない。  リクが振り向き、「へえ」と感心したように言った。 「スプリントタイプか。それなりに対策はしてきたみたいだな」 「ああ、ばっちりだよ」 「けど、こんな序盤で貴重なブーストを使っていいのか? 俺の見立てでは、お前が使えるブーストの最大回数は三回。これで残り二回だ」  ブーストの回数までお見通しってわけか。ぼくはリクを強くにらむが、軽く受け流される。   「カケル、一つ目のランドマークよ」 「ああ、見えてきた」  視線の先に見えた朱色の鳥居。その裏手に巨大なセンダンの木が見える。一週間前と変わらず、ぼくたちを静かに待っていた。  センダンの木との距離はグングン縮まっていく。ぼくには、まだ最高速度で方向転換する実力はない。そろそろ限界か――。 「カケル、スピードに注意して」 「ああ、分かってる」  ぼくは体とツバサの向きを少し変え、スピードを落とす。反対に、リクはそのままのスピードでランドマークへ突っ込んだ。  「さあ、オレについてこれるかな。”ターン”!」  リクがコマンドを唱えると、一方のツバサの光が急激に大きくなる。リクの体がクルリと水平に回転し、センダンの木をかすめるように曲がっていく。通過した後、センダンの木の枝が大きくしなった。  この前見た時より、スムーズな動き――あれが本気じゃなかったのか。 「カケル、今のスピードなら曲がれるはずだよ。練習の成果を見せてみなさい」 「ああ、見ててくれ!」  これ以上スピードを落とせば、再加速に時間がかかる。ぼくはツバサをコントロールできるギリギリのスピードを見極め、ランドマークを通過する。振り返ると木の葉がいくつか宙を舞っていた。 「やった!」 「やるじゃん。……でも喜んでばかりもいられない。リクとの差は広がってる。すぐにスリップストリームについて」 「ああ、もう一度ブーストをかける!」  ターンを使ったリクとの差をつめるには、ブーストに頼るしかない。二回目のブーストを使い、ぼくは再びリクの背後に張り付いた。  リクはぼくに向かって余裕の笑みを浮かべる。 「これで二回目。残り一回だな」 「――わざわざ教えてくれてありがとう」  リクとの差をジリジリとつめていく。このまま抜けるんじゃないか? そう考えていると、ナビゲーターを務めるソラの声が聞こえる。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加