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その後、ぼくとソラとリクの三人でリレーに出ることがクラスで無事承認された(ソラの勢いに、誰も反対意見を言えなかった)。
運動会の練習も本格的にはじまり、まずはコースの下見をすることになった。リレーのスタート地点はグラウンド。放課後、ぼくたちは勢いよく教室を飛び出した。
「カケル。リレーでは、三人とも同じコースを走るわけじゃない。走順によって大きく違うから、自分の特徴にあったコースを走ることになるのよ」
「その通り。一走目はスラローム、二走目はノーマル、三走目はスプリントタイプが有利だな。オレたちは全員違うタイプだから、走順は決まったようなもんだ」
ぼくはスプリントタイプ。ということは――、
「アンカーはぼくか」
「そうなるわね。負けたら承知しないから」
「負けるつもりはない。ただ、脅されてもぼくは速くならないからね」
グラウンドに到着すると、ちらほら生徒の姿が見えた。いつもはほとんど人がいないけど、運動会が近づいた今は別。大縄跳びや帽子取りなど、思い思いに汗を流していた。
その中に、ランド・セイルを背負った一団がいた。三人ともリクと同じくらい背が高い。もしかして、あれが――、
「やあ、ソラ。五年生も今日からリレーの練習かい?」
「そうよ。今年こそ、アンタたちにリベンジしてやる」
三人のうちの一人、さわやかな笑みを浮かべた男子が、ソラに話しかけた。大人びた風貌でいかにも上級生という雰囲気。ふむ、ぼくとキャラが被るな。
ぼくはリクにヒソヒソと話しかける。
「この人たちが六年生のリレーメンバーなの?」
「そうだ。今話しかけてきたのがハヤト。この三人のリーダー格だな。この学校で一番の実力者だ」
「他の二人は?」
「筋肉バカっぽいのがダイチ。運動神経がずば抜けて高いから、動物みたいな動きをする」
ふんふん、なるほど。リクと同じタイプだな。
「最後の一人はお金持ちのお嬢様のマイ。びっくりするぐらいの豪邸に住んでるんだぜ」
少し偉そうな感じがソラと似てる……なんて言ったら怒られるだろうな。
マイがソラに向かって、クスリと笑う。
「わたくしたちにリベンジなんてできるかしら。去年、あれだけボロ負けしたというのに」
「去年はメンバーが悪かったの。今年は違う」
(去年参加した誰か……。ひどい言いようでごめんなさい)
ぼくは心の中でソラの代わりに謝った。
ダイチがぼくの顔をジロジロと眺める。リクより体が一回りゴツく、思わずたじろいだ。
「へえ、これがウワサの都会から来た転校生か」
「おい、ダイチ。下級生を怖がらせてどうする」
「ハヤト、オレはただ挨拶しようとしただけさ」
ぼくはペコリと頭を下げた。挨拶はこれで終了! だからぼくから離れてくれ。
ダイチと入れ替わるように、ハヤトがぼくを見る。
「たしかカケルくんだったよね? たった数日でランド・セイルを使えるようになったらしいじゃないか。今年のリレーはおもしろくなりそうよ」
「どうして、ぼくのことを知ってるんですか?」
「ああ、ソラが毎日キミのことを語るもんだからね」
ハヤトがアゴでクイッとソラ指し示した。するとソラが顔を真っ赤にして焦る。
「ちょっと、お兄ちゃん! 誤解するような言い方は止めて」
え、お兄ちゃん? ということは……。
ぼくはハヤトとソラを交互に眺める。よく見るとたしかに似ている。ぼくはリクの耳元でささやく。
「本当に兄弟なのか? 顔は似ているけど、すごく優しそうな兄と違って、妹はすごく口が悪い」
「ああ、残念ながら兄弟で間違いない」
「そこの二人、聞こえてるってーの!」
ぼくとリクの背中をバシッと叩く音が、グラウンドに響いた。
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