6話 学校最速のチーム

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 その後、ぼくとソラとリクの三人でリレーに出ることがクラスで無事承認された(ソラの勢いに、誰も反対意見を言えなかった)。  運動会の練習も本格的にはじまり、まずはコースの下見をすることになった。リレーのスタート地点はグラウンド。放課後、ぼくたちは勢いよく教室を飛び出した。   「カケル。リレーでは、三人とも同じコースを走るわけじゃない。走順によって大きく違うから、自分の特徴にあったコースを走ることになるのよ」 「その通り。一走目はスラローム、二走目はノーマル、三走目はスプリントタイプが有利だな。オレたちは全員違うタイプだから、走順は決まったようなもんだ」  ぼくはスプリントタイプ。ということは――、   「アンカーはぼくか」 「そうなるわね。負けたら承知しないから」 「負けるつもりはない。ただ、脅されてもぼくは速くならないからね」  グラウンドに到着すると、ちらほら生徒の姿が見えた。いつもはほとんど人がいないけど、運動会が近づいた今は別。大縄跳びや帽子取りなど、思い思いに汗を流していた。  その中に、ランド・セイルを背負った一団がいた。三人ともリクと同じくらい背が高い。もしかして、あれが――、 「やあ、ソラ。五年生も今日からリレーの練習かい?」 「そうよ。今年こそ、アンタたちにリベンジしてやる」  三人のうちの一人、さわやかな笑みを浮かべた男子が、ソラに話しかけた。大人びた風貌でいかにも上級生という雰囲気。ふむ、ぼくとキャラが被るな。  ぼくはリクにヒソヒソと話しかける。 「この人たちが六年生のリレーメンバーなの?」 「そうだ。今話しかけてきたのがハヤト。この三人のリーダー格だな。この学校で一番の実力者だ」 「他の二人は?」 「筋肉バカっぽいのがダイチ。運動神経がずば抜けて高いから、動物みたいな動きをする」  ふんふん、なるほど。リクと同じタイプだな。 「最後の一人はお金持ちのお嬢様のマイ。びっくりするぐらいの豪邸に住んでるんだぜ」  少し偉そうな感じがソラと似てる……なんて言ったら怒られるだろうな。  マイがソラに向かって、クスリと笑う。 「わたくしたちにリベンジなんてできるかしら。去年、あれだけボロ負けしたというのに」 「去年はメンバーが悪かったの。今年は違う」 (去年参加した誰か……。ひどい言いようでごめんなさい)  ぼくは心の中でソラの代わりに謝った。  ダイチがぼくの顔をジロジロと眺める。リクより体が一回りゴツく、思わずたじろいだ。 「へえ、これがウワサの都会から来た転校生か」 「おい、ダイチ。下級生を怖がらせてどうする」 「ハヤト、オレはただ挨拶しようとしただけさ」  ぼくはペコリと頭を下げた。挨拶はこれで終了! だからぼくから離れてくれ。  ダイチと入れ替わるように、ハヤトがぼくを見る。 「たしかカケルくんだったよね? たった数日でランド・セイルを使えるようになったらしいじゃないか。今年のリレーはおもしろくなりそうよ」 「どうして、ぼくのことを知ってるんですか?」 「ああ、ソラが毎日キミのことを語るもんだからね」  ハヤトがアゴでクイッとソラ指し示した。するとソラが顔を真っ赤にして焦る。 「ちょっと、お兄ちゃん! 誤解するような言い方は止めて」  え、お兄ちゃん? ということは……。  ぼくはハヤトとソラを交互に眺める。よく見るとたしかに似ている。ぼくはリクの耳元でささやく。 「本当に兄弟なのか? 顔は似ているけど、すごく優しそうな兄と違って、妹はすごく口が悪い」 「ああ、残念ながら兄弟で間違いない」 「そこの二人、聞こえてるってーの!」  ぼくとリクの背中をバシッと叩く音が、グラウンドに響いた。
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