3人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
5話 決戦、勝利のカギは節約術
勝負の日を迎え、ぼくは朝からランド・セイルのことばかり考えていた。
授業中、ぼくは豊かな想像力を駆使し、頭の中でレースのシミュレーションをしていると、
「カケル君。その顔、授業に集中してないでしょ」
とイケちゃん先生に頭をコツンと叩かれてしまった。
うう……あと一歩でリクに勝てそうだったのに。
すべての授業を終えると、ぼくはすぐにランドセルを背負った。
「転校生。ずいぶん早く準備ができたようじゃないか。もしかして、負けるのが怖くて逃げ出すつもりか?」
振り返ると、リクが教科書をランドセルに片づけているところだった。
ぼくは、ふふんと鼻を鳴らす。
「そんなことはない。勝負が待ち遠しくてね。帰る準備だけでなく、レースでもぼくが速いことを証明してみせるよ」
「ハッ。よく言うぜ」
「ほらほら二人とも。戦いは口じゃなく、レースでやりなさいよ」
ぼくたち三人は学校を出ると、スタート地点の公民館へ向かう。
「勝負の前に、お互いバッテリーを一〇〇パーセントまで充電しよう」
「いいぜ」
酉紀町には、ランド・セイルを充電できるスタンドが各地に設置されている。公民館もその一つだ。
公民館に到着すると、ぼくとリクはランド・セイルを背中から下ろし、スタンドに接続した。これでブーストを使える回数は最大になる。
ぼくは、ふうと息をはき、空を見上げた。
朝からレースのことばかり考えすぎていたようだ。一旦、頭をスッキリさせ、もう一度集中しよう。
…………。
「カケル! なにボーッとしてるの? そろそろはじめるよ」
ソラの声に、ぼくはハッとした。
いつの間にか充電は終わっている。ぼくはランド・セイルを背負った。
目を閉じ、背中に意識を集中させる。手の動きに合わせてツバサがスムーズに動くのを感じた。
よし、準備完了だ。
審判をつとめるソラが、コホンと咳払いをした。
「二人とも準備はできたようね。先に校門をくぐった方が勝ち、いいわね?」
ぼくはうなずき、隣に立つリクを見た。
勝負の相手は、ニヤリと自信有りげな笑みを浮かべる。
「転校生、勝つのはオレだ」
「それはどうかな」
正直、実力差は大きい。けど、簡単にあきらめてたまるもんか。
ソラはぼくとリクの準備が整ったことを確認し、戦いのはじまりを告げる。
「それじゃあ、位置について……よーい、スタート!」
ぼくとリクは同時に叫ぶ。
「”フライ”!」
瞬間、ぼくの体は地面を離れ、あっという間に二階の屋根を越える高さに到達した。
そして、背中のツバサをコントロールしながら、街の上空を飛んでいく。
リクの姿が見えない――どこだ?
「オレの前は飛ばせないぜ、転校生!」
ぼくの頭上から、リクが前へ飛び出してきた。
速い。けど、勝負ははじまったばかりだ――。
最初のコメントを投稿しよう!