5話 決戦、勝利のカギは節約術

1/5

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ

5話 決戦、勝利のカギは節約術

 勝負の日を迎え、ぼくは朝からランド・セイルのことばかり考えていた。  授業中、ぼくは豊かな想像力を駆使し、頭の中でレースのシミュレーションをしていると、 「カケル君。その顔、授業に集中してないでしょ」  とイケちゃん先生に頭をコツンと叩かれてしまった。  うう……あと一歩でリクに勝てそうだったのに。  すべての授業を終えると、ぼくはすぐにランドセルを背負った。 「転校生。ずいぶん早く準備ができたようじゃないか。もしかして、負けるのが怖くて逃げ出すつもりか?」  振り返ると、リクが教科書をランドセルに片づけているところだった。  ぼくは、ふふんと鼻を鳴らす。 「そんなことはない。勝負が待ち遠しくてね。帰る準備だけでなく、レースでもぼくが速いことを証明してみせるよ」 「ハッ。よく言うぜ」 「ほらほら二人とも。戦いは口じゃなく、レースでやりなさいよ」  ぼくたち三人は学校を出ると、スタート地点の公民館へ向かう。 「勝負の前に、お互いバッテリーを一〇〇パーセントまで充電しよう」 「いいぜ」  酉紀町には、ランド・セイルを充電できるスタンドが各地に設置されている。公民館もその一つだ。  公民館に到着すると、ぼくとリクはランド・セイルを背中から下ろし、スタンドに接続した。これでブーストを使える回数は最大になる。  ぼくは、ふうと息をはき、空を見上げた。  朝からレースのことばかり考えすぎていたようだ。一旦、頭をスッキリさせ、もう一度集中しよう。  …………。 「カケル! なにボーッとしてるの? そろそろはじめるよ」  ソラの声に、ぼくはハッとした。  いつの間にか充電は終わっている。ぼくはランド・セイルを背負った。  目を閉じ、背中に意識を集中させる。手の動きに合わせてツバサがスムーズに動くのを感じた。  よし、準備完了だ。  審判をつとめるソラが、コホンと咳払いをした。 「二人とも準備はできたようね。先に校門をくぐった方が勝ち、いいわね?」  ぼくはうなずき、隣に立つリクを見た。  勝負の相手は、ニヤリと自信有りげな笑みを浮かべる。 「転校生、勝つのはオレだ」 「それはどうかな」  正直、実力差は大きい。けど、簡単にあきらめてたまるもんか。  ソラはぼくとリクの準備が整ったことを確認し、戦いのはじまりを告げる。 「それじゃあ、位置について……よーい、スタート!」  ぼくとリクは同時に叫ぶ。 「”フライ”!」  瞬間、ぼくの体は地面を離れ、あっという間に二階の屋根を越える高さに到達した。  そして、背中のツバサをコントロールしながら、街の上空を飛んでいく。  リクの姿が見えない――どこだ?  「オレの前は飛ばせないぜ、転校生!」  ぼくの頭上から、リクが前へ飛び出してきた。  速い。けど、勝負ははじまったばかりだ――。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加