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6話 学校最速のチーム
あれからリクとすっかり打ち解け、放課後の練習にも付き合ってくれるようになった。
ツバサのコントロールも人並みにうまくなり、スピードをできるだけ落とさずに方向転換もできるようになった。そろそろソラの弟子から卒業かな。
放課後、今日も三人でグラウンドへ向かう。その最中、リクの言葉にぼくは腰を抜かした。
「ええ! リクって転校するの!?」
「ああ、二ヶ月先だけどな。親父の仕事の都合で、都会に住むことになってる」
「都会ってことは、ランド・セイルは使えないんだよね?」
「そうなんだよ! こんなおもしろいモノを手放さなきゃならないなんて、最悪だ」
リクは肩を落とし、残念そうにため息をついた。
「カケルにイラついてたのも、転校が理由なんだ。都会に引越しするオレの前で、都会から来て楽しそうにしていたからな。つい八つ当たりしてしまうなんて、あの時は大人げなかったな……」
「おい。キレイな思い出みたいに言ってるけど、ついこの間の話だろう」
悪い悪い、とリクはぼくの背中をバシバシと叩いた。
せっかく仲の良い友達ができたのに、別れるのは寂しい。
もう一人の友達は少し性格に難があるからな。二人きりの状況に戻ったら、何をしてくるか分からない。ぼくはソラをチラリと見た。
「カケル、その馬鹿にしたような目つきは何?」
「……これは生まれつきだ」
そういえば、とぼくは話を続ける。
「ソラはリクの転校のことは知ってたの?」
「まあね。だからこそ、カケルの育成に力を入れてるの」
「……リクの転校とどう関係するんだよ」
「それが大有りなの」
ソラは、ピョンと飛び跳ねるように一歩前に出て、振り返った。
「一ヶ月後、運動会があるのは覚えてる?」
「うん、イケちゃん先生が言ってた。どの競技にエントリーするか、決めなきゃならないんだよな」
「酉紀小学校の運動会には、他の学校にはない特別な競技があるの。それは運動会の最後を飾るランド・セイルのリレーよ。各学年から選抜された三人で優勝を争う」
さすがランド・セイルを実験している街。
リクとやった一対一のレースも楽しかったけど、チームで戦うのもおもしろそうだ。ちょっとワクワクしてきたぞ。
「……ぼくも出てみたいな」
「カケル、何言ってるの。この三人で戦うに決まってるじゃない。拒否は許さないわ」
強制参加なのか。まあ、いいけど。
「同い年にはわたしとリク以外、速く飛べる子がいなくてね。毎年悔しい思いをしてきたの」
「へえ……そうなんだ」
この二人とチームメイトだった子。さぞ大変だっただろうな……。
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