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 アルバイトを終えて携帯を確認すると、カズヤから一言、『集合』とメッセージが来ていた。彼は何かおもしろいことがあると僕に集合をかける習性があるから、今回も何か暇をつぶせるようなことが起きたんだろうなと思った。 『いまバイト終わった。本屋寄ってから行く』  厨房でフライパンを振っている先輩に「お疲れさまでーす」の声を掛けたあと、僕は急いで近くの書店を目指した。今日はいま話題の漫画、『プロのアルマジロハンター』の最新刊が発売される。前巻の発売からもう一年以上が経過していた。それも仕方がない、作者は去年、婚約者に関するあることで炎上したのだ。とにかくカズヤとの暇つぶしも大事だが、いまはやっと発売されたこの漫画が最優先だ。  書店には「本日発売! 今話題の漫画『プロのアルマジロハンター』」と目に悪そうな色合いのポップがでかでかと飾られていて、その人気を象徴するように最新刊がカートに巨大なピラミッドを形成していた。僕はそれをひとつ手に取ったあと、会計時に特典のイラストを受け取り、急いでカズヤの家を目指した。  彼の家を尋ねるときは基本家の施錠をしないから、僕はそのまま玄関のドアノブを引いた。いやに家賃の安いアパートだから、そもそも鍵が正常に機能していないのかもしれない。案の定鍵は開いたままだったので、「ただいま」と声を掛けると、ワンルームの奥から「お前の家じゃねえよ」といつもどおりの声が返ってきた。 「で、なんかあったの?」  早速僕が本題に触れてやると、彼は某洋菓子屋の前に立つマスコットキャラクターのように、にんまりと妖艶な笑みを浮かべた。それからポケットに収まっていたスマートフォンを取り出す。 「いや、おもしろい迷惑メールが届いたから」 「はあ、それだけ?」 「いいから見てみろよ」  彼からスマートフォンを受け取り、画面を見る。件名に『助けてください』と書かれたメールは、こう続いていた。
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