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余り野菜カレー
カレーライス〜ゴロゴロ野菜〜
日曜日の午後。
遊びに飽きた子ども達がだらけ始める時間帯。
こんなときこそ……。
私はありったけの野菜を冷蔵庫から取り出した。
「お母さん、飽きた」
そう言って足元にすがりつく、やんちゃ盛りの息子と娘。
先程まで子ども達が遊んでいたリビングを見ると、昨日買った食玩人形が虚しく横たわっていた。
だから言ったのにと、心の中でそっとため息をついた。
親の心子知らずとは、よく言ったもので、彼らは次の遊びを求めて、私のエプロンを両脇から引っ張り出す。
「飽きたー」
実は、月に何度か起こるこの現象を私は密かに待っていたりする。
「じゃあ、カレーパーティーしよう」
そう言うと、彼らは無邪気にはしゃぎ出す。
この間はたこ焼きパーティーだったが、とにかくパーティーと名が付けばいいらしい。
そう言えば、二人は夕飯の準備に取り掛かってくれる。
「隊長と班長、まずは手を洗って」
そう言うと二人は、洗面所に駆け出す。
その間に、二人が普段食べたがらない野菜をどんどん冷蔵庫から取り出した。
そして、二人分のまな板と包丁。
二人が帰ってきたところで、野菜の切り方を教える。
どの野菜も大きめのカット。
競う合うように、二人は野菜を手に取り切っていく。
切り終われば、息子隊長に肉をフライパンで焼かせ、娘班長に野菜を鍋で炒めて貰う。
肉の色がこんがりしたらという曖昧な基準のせいで、肉焼けましたの雄叫びを五回も聞くことになったけれど無事に焼けた。
肉が焼けたら、鍋に入れて、野菜と一緒に煮込む。
煮込まれる鍋を二人は、交代で見る。
洗い物が終われば交代し、ご飯を洗えば交代する。
忙しなく、楽しそうに、夕飯を作る二人。
飛び交う隊長と班長の号令。
私はのんびりと、子ども達のパーティー準備を見守ることに専念した。
仕上げに二種類のルーを二人に入れて貰い、味見を三人でする。
隠し味もない普通のカレーだが、美味しさはひとしお。
三人で、その美味しさに歓喜した。
外まで響いたその声は、ちょうど帰宅してきた夫にも聞こえていたようだった。
そして、美味しいカレーの香りも外に漏れ出ていたようだった。
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