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3年前
結婚してもう1年。早いなぁ、と思いながらも都会の暑さにいまだ慣れない麻矢は窓から見える熱気で揺らめく高層ビルに溜め息をついていた。暑さ対策を考えるものの、日焼けより日差しが気になり、帽子や日傘をあれこれと用意していた。
もう少しで出かける時間になるというのに、マイペースな匠は服も着替えずに呑気にテレビを見ながらスマホも見ている。
ますます深くため息をついてその場から離れた。
「なんでいつも時間ギリギリまでそうなのかしら?」
ぶつぶつと独り言を言いながら今さら干された洗濯物を畳み始める。でも、気持ちを察して欲しいからついハンガーも乱暴に扱って、ガンガンと音を立ててしまう。
リビングから「あははは」と笑い声が聞こえると、もう我慢が出来ない。
「ねえ、匠さん!いつ準備するの!」
急に大きな声で話しかけられたので何事かと思い、驚いて振り返る。
しかめっ面になぜか洗濯物を握りしめて見ている麻矢にますます理解が追いつかない。
「え?なに?どうしたの?」
全く麻矢の心情に気づいていなかったことに火に油を注ぐように怒りが込み上げて来る。
「何時に出かけるつもりなの?もう10分もないよ?出かける気があるの?」
どこから手をつけていいか分からず匠は口をパクパクとするが、怒られる理由が見当たらない。だがここはこちらも冷静に対応しなければ麻矢はきっと収まらない。まずは何から伝えるべきか?
「いや、ほら。出かける準備は出来てて、あとは着替えるだけだし。もう出かけられるなら、着替えるよ。ほら、今まで食器洗って、飲み物も作ってたから、まだ行かないのかな〜って思って」
「行くに決まってるでしょ!私はもう準備が出来た!」
おっとと、これはまずい。かなりのご立腹。匠は大慌てで服に着替えたが麻矢はすでに玄関で靴を履いている。このままだとまた1人でとっとと行ってしまう。
「あ!ほら!飲み物とか持った?荷物持つよ!」
匠は滑り込みで玄関に向かい麻矢の手から荷物を取り、並んで出ることが出来た。
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