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何が起こったか分からなかった。
何故こいつがここにいるのか。
どうして、腹から血を流しているのか。
「私は…大丈夫だから、…早くその女性を。」
もう助からない。
誰が見ても明らかだった。
助からない葵か、今なら間に合う目の前の女か。
土方は選択に迫られる。
「早く行って。」
「お前も一緒に、」
次の言葉は続かなかった。
葵の目を見れば明らかだ。
決して諦めたわけじゃない。
すぐに医者を呼んできてやる。
「俺が戻ってくるまで、くたばるなよ。」
医者と共に戻ってきた土方が目にしたのは、葵がいたと思われる場所に落ちる赤い血痕だけだった。
兄上は私が死んだと思ってる。
治癒力で傷は癒せたが、普通あの状態で生きてるはずがない。
神様との約束を守るためにも、もうここにはいられない。
陰ながら、沖田さんを救う方法を考えないと。
最後にそうちゃんに謝りたかったな。
去りゆく土方を隠れ見ながら、葵はそんなことを考えていた。
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