別れ

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「彼がどんな人物なのか知りたい。そして、安政の大獄で死ぬのを回避したい。」 確か、自ら老中の暗殺計画を暴露し、幕府を批判したことで斬首されたのだ。計画を暴露しなければ死ぬことはなかった。彼の死を何としてでも回避しないと。 「それなら、松下村塾に入るのがいいでしょう。3年後の萩に連れていきます。」 「3年後?今じゃ駄目なの?」 「今は、密航に失敗し、野山獄に入ってます。」 吉田松陰、なかなかの曲者かもしれない。 「それから、これをどうぞ。」 突如、白い空間に男物の着物と髪紐、土方家に置いてきた金の入った袋が現れる。 その場で着物を脱ぎ、男のように高い位置で髪を結ぶ。 「なかなか様になってますよ。」 剣道をしてきたからかな。男物を着ると、男に間違われるんだよね。 「それでは行って大丈夫ですか?」 神からの問いかけに思わずストップをかける。 「後1日だけ待って。江戸の町を最後に見てまわりたい。」 しばらく戻ってこれないだろう。遠目からでも、馴染みの場所を見ておきたい。 「それでは、明日の夕方、この場所でお待ちしてます。」 気がつくと、元の神社に戻っていた。 今日は遅いしどこかに泊まって、明日は朝から出掛けよう。 葵は宿を求めて、一人、夜の闇に消えていった。
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