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「やめないか!」
家に近づくと、男の人の怒鳴り声が聞こえてきた。
「だって、だって。この嘘つき!」
「嘘じゃねぇ。葵は死んだんだ。」
え?私?
というか、あれは兄上と…そうちゃん!?
「離して下さい、近藤さん。この嘘つきに、今すぐ嘘だと認めさせます。」
「嘘じゃねぇ。本当だ。いくら俺でもこんな嘘つかねぇ。」
「じゃあ、その葵って人は私が知ってる人と違います。」
家の回りにはたくさんの人が集まっていた。見るとどれも見知った顔ばかり。皆一様に暗い顔をし、中には涙を流すものさえいる。
「いい加減に認めろ。試衛館近くの木の上。そこでいつも会ってたんだろうが。」
「違います。僕の知ってる人は死んだりしません。」
「2人とも辞めないか。葬式の場だぞ。ケンカをするなら、出ていけ。」
近藤と呼ばれていた人に諌められ、宗次郎は動きを止める。土方も罰が悪そうな顔をしている。
「土方さん、ごめんなさい。僕、妹さんに挨拶出来そうにありません。先に帰ります。」
「おい、待て。」
2人の争う声が止み、周りにはすすり泣く声だけが静かに聞こえる。
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