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過去へ
やっぱり、過去に来れたんだ。
着物や髷の人達を見て、漸く過去に来た実感が沸いてきた。
これからどうしよう。沖田さんを救いたいけど、ここはどこで今は何年だろう。
誰かに聞きたいが、いきなりそんなことを聞いても、頭がおかしいとしか思われない。
唯でさえ、今の私は人目を引いている。
葵が近くを通る度に、人が振り向き、こそこそと何かを話している。
容姿の整った彼女は、現代でも大変モテた。それに加え、豪華な着物を着ている。
皆一様に、葵の美しさに目を引かれ、どこの姫様だろうと囁いているのだが、彼女はそんな事情など知りもしない。
居心地が悪い。
顔を隠すように、下を向き、急いで歩いていたのが、悪かったのだろう。目の前に人がいることに気がつかなかった。
「きゃっ」
尻餅をついた葵の前には、刀を持った、見るからに悪そうな3人組。
「なんだ、お前。この俺にぶつかるとはいい度胸だな。」
「こいつ、なかなか美しい顔をしてますぜ。」
「俺たちに着いてきてもらおうか。」
これはまずいことになった。
助けを求めて周りを見るが、皆視線を背け、見て見ぬふりをするばかり。
しょうがない。怪我をするのは嫌だけど、自分でどうにかして逃げなきゃ。
腹をくくり、相手のすきを伺っていると、一人の青年が葵を庇うように、目の前に割り込む。
「おいおい。女一人に男三人とは。男の風上にもおけねぇな。」
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